パートナービジネスキーマンインタビュー 株式会社ラクス 冨樫嘉一氏

2024/6/13

ハイウェイでは、「パートナービジネスのキーマンインタビュー」と題して、各企業のパートナービジネスのキーマンから、パートナービジネスの立ち上げや組織作りに、どのようにして取り組んできたのかをお伺いしています。

第二回は、株式会社ラクス ラクスクラウド事業部のパートナービジネスについて、ラクスクラウド事業本部 ラクスクラウド企画部 パートナーシッププロモーション課 課長の冨樫 嘉一様にお話をお伺いしました。

本インタビューでは、冨樫様に株式会社ラクスのパートナービジネスの歴史や今後の戦略、組織の構想などをお伺いしました。

経歴について

まずは冨樫様がパートナービジネスに関わるようになったきっかけについてお伺いしても良いでしょうか?

実は新卒で携帯電話の販売店に入り、個人・法人両方に向けて販売をしていました。その中で個人向けの営業をすることもあったんですが、そこで営業に時間を使っても1台売れるか失注するかで…この営業方法は効率が良くないなと思ったんですよね。

一方で、法人向けの営業であれば複数台買ってくれる可能性があるんです。ただ、今度はどうやって法人にコンタクトをとるのかが課題になります。

そこで試行錯誤をしていくうちに、第三者を介すると既存の関係性に入り込めるので、コンタクトを取りやすいということに気づきました。

しかも、当時は携帯電話を持っている人が少なく、本体は無料に近い形で配布できたので、保険会社に契約時のノベルティとして渡してもらうようにしたら、この施策がヒットして全国でかなり成果を出すようになりました。パートナービジネスに関わり出したのは、この仕事がきっかけですね。

自分の仕事の根底に、何かを販売したい時に、売りたいところに直接行くのも良いが、人を介して販売をした方がスピードも上がり、インパクトが出しやすくなる、という考えがあります。この考えは当時の経験やその後のパートナービジネスの経験を経て確立されていったと思います。

株式会社ラクスでパートナービジネスに関わるようになるまでには、どのような経緯があったのでしょうか?

その後、他の会社でも色々なことを経験させていただきました。一時期はブライダルのコーディネーターなども経験しました。その企業はゼクシィなどの媒体を活用することで、セールスの効率化を図っていました。色々なサービスを扱ってきましたが、パートナービジネスに関わることが多かったですね。

SaaSのパートナービジネスとしての出発点は、一つ前の中華系のソフトウェアの会社です。この会社が、とあるタイミングからサブスクリプション形式でソフトウェアを提供するようになり、その時期に会社としてパートナーセールスを始めたので、そこでSaaSとしてのパートナービジネスの経験を積むようになりました。

その後、ラクスにきて配配メール事業のパートナーセールスを立ち上げを行うようになりました。

株式会社ラクスの配配メール事業について

立ち上げに関わった配配メールというサービスについて簡単にお伺いしても良いでしょうか?

配配メールという名前なので、単なるメール配信エンジンだと誤解されやすいんですが、MA(Marketing Automation)に近いサービスになっています。

メールを配信するだけではなく、メールを配信した人が今どのページを見ているかなども判別できるようになっています。

これらの機能を活用し、中小零細企業であれば営業の代わりに新規案件のきっかけを作ったり、ECサイトでは購買の促進に繋げたり、マーケティングや営業促進など幅広く活用をいただいております。

最近では、自治体がふるさと納税のマーケティングで使っている事例もあったりしますね。

この市場自体の成長幅は4~5%くらいですが、配配メールはそれよりも高いペースで成長・拡大をしていっていますね。

株式会社ラクスは、元々直販の営業がいると思うんですが、どういった経緯でパートナービジネス立ち上げることになったのでしょうか?

私が入社した6年前の時点で、すでに直販営業も代理店営業も両方ありました。ですが、代理店に対して案件を作っていったり、一緒に施策を考えるような動きをする営業は一人もいませんでした。

あくまで、反響営業として問い合わせが来た案件の対応をするという状態で、実際はほとんど直販だけで動いていましたね。

ただ、元々インバウンドで案件を取っていたんですが、ここに費用をかけてもある程度で限界が来てしまうんですよね。そこで売上拡大のためにできることとして、あまり手をつけていなかった代理店が対象になったわけです。この取り組みは配配メールに限った話ではなく、楽楽精算・楽楽明細・楽楽販売の事業でも同じように、パートナービジネスを立ち上げることになりました。

初めは、テスト的に半年くらいパートナーセールスを任されて、翌年にはパートナーセールスと直販を完全に切り分けて、部署の立ち上げから任されることになりました。

他の事業部でもそこまでしっかりした体制でパートナーセールスに組めていなかったので、このタイミングで各事業部のパートナーセールスを強化し、ノウハウを共有しながら進めていきました。

パートナービジネスの組織について

パートナービジネスの組織に関して、こだわりや今後の構想などはありますでしょうか?

パートナーセールスの役割は大きく分けると、パートナーの開拓、パートナーと案件を創出する、パートナーとの案件を受注する、の3つに分けられると思っています。

基本的には、僕のチームでは一人で全部やるようにしていました。これは、先ほど言ったように代理店との信頼関係構築を考えると、一貫して関わるメンバーがいた方が良いという理由です。

ただ、今のパートナーシッププロモーション課では、代理店さんに色々なソリューションを提案してリードを作るところまでを支援して、リードを作った後のナーチャリングや商談はパートナーの営業支援をするチームに見てもらっています。

これは、規模の拡大に伴って、一人がパートナーセールスのプロセス全体をみることが難しくなってきたというのが一番の理由です。クロスセルを進めていくためにも、色々な商材を掛け合わせてリードを作れる必要が出てきたので、そこに注力するための組織でもありますね。

ラクスのパートナービジネスの歴史

パートナーセールス部署を立ち上げる時は、何から着手したのでしょうか?

最初はやっぱり人ですね。これは一番大事だと思います。とはいえ、新規でパートナーセールスの採用をしようと思っても、部署として立ち上がりきっていない段階では採用をするのは難しい。

そこで、社内の営業からマッチするメンバーを見つけてアサインをしなければいけない。そのために、営業の中からパートナーセールスに向いている人を見付けて、連れてきて、育てていく、ということをしていました。

パートナーセールスに向いているかはどの部分を見て判断していましたか?

まず、一つ目は直販で売れる人かどうか。パートナーセールスって、パートナーを開拓しパートナーとともに案件を作り、その案件をパートナーに受注させないといけないんですよね。この案件同席の時に、直販で売れる人じゃないと、案件が失注してしまうんですよね。そうすると、パートナーが継続的に売る原動力が生まれない。

二つ目はコミュニケーション力です。ここでのコミュニケーション力は、自己開示ができる力と仮定していました。自分が自己開示をせずに、相手のことを知ろう、教えてもらおうと思ってもそんなにうまく行かないと思います。まずは、自分が生い立ちも含めて喋れて、それによって相手も心を開いてくれる。この関係性が担保できる人は、パートナーとのコミュニケーションも円滑に進められるだろうと考えていました。

パートナーとの関係性にこだわっているのは、パートナーセールスにおいては、提案よりも施策の実行こそが重要と考えているからです。

パートナーの方が自社のサービスを扱う時に何が必要かと考えると、信頼関係だと思うんですよね。どれだけ良いサービスでも、信頼されていないといきなり売ってはくれないし、リスクを取って動いてはくれないんですよね。

施策や提案の質は信頼関係ができていれば、後からでもついてくると思っています。何よりも実行してもらえる関係性を構築することが大事です。

パートナーとの信頼関係が重要ということに気づいたきっかけなどはあったのでしょうか?

パートナーが全国に増えて分かったことなんですが、大都市圏ほど、価格優位性や機能差で購入をしてくれるんですが、地方に行けば行くほど、それだけでは購入してくれません。とある信頼できる人から紹介されたサービスなら、購入してくれるということが多いです。

これは、日本の古き良き文化だと思っていまして、それが色濃く出ているのが特に地方なので、パートナーを全国展開していくのであれば、信頼関係を築くコミュニケーション力が必要ですね。

あと、その後の採用や担当を決める際にも、その地方と関連のある人材をアサインするようにしていました。

九州の大学卒のメンバーは九州を担当、前職の時に近辺に住んでいたことがあるメンバーは近畿を担当、とかですね。

そのエリアとの何かしらの繋がりがあるかどうかは、信頼関係を作るきっかけとして非常に重要です。

パートナーセールスのメンバーを拡充した後はどのような施策をしましたか?

その後は、パートナーの数をとにかく増やしました。当時、すでにパートナーは5,60社いたんですが、何か継続的なフォローやアプローチをしているわけではないので、登録しているだけという状態でした。彼らからの案件や受注があるんですが、そこまで多くありません。とにかく新規のパートナーを増やすことを目標にして動きました。

ディストリビューターを使ってその先の販売店さんに紹介をしてもらうケースもありましたし、既存の代理店に近い業種のお客さんがいればパートナーになりませんか?とお声がけするようなこともやっていました。

その甲斐あってか、今は配配メール単体で700社くらいの代理店がいて、紹介取次だけしてくれる企業も含めると2000社くらいのパートナーがいますね。

既存パートナーのアクティブ化よりも、新規パートナーの開拓を優先したのはどういった理由からでしょうか?

一つは教育の観点です。新たにパートナーセールスを経験するメンバーがスキルを上げていくためには、色々なパートナーとのコミュニケーションを取り、その中で課題をクリアする必要があると考えていました。事業の拡大はもちろんのこと、パートナーセールス部署としての成長のためにも、当時は既存のアクティブ化よりも新規パートナーの開拓が重要であると判断しました。

もう一つの理由は、課題と市場を知るためですね。やはり、最終的にはパートナーの数を増やすだけではなく、パートナーの質を上げたいとは思っていました。SaaSってサービス単体で売るのは難しくて、関連性の高いサービスとセットで売る方が売りやすいんですよね。

その未来を考えた時に、パートナーは他にどんなサービスを扱っているのか、どんな課題と向き合っているのかを知る必要があったんです。そのためにも、多くのパートナー企業から話を聞いて、データでまとめるようにしていました。

パートナー契約を結ぶ際に気をつけていることはありますでしょうか?

商流には特に気をつけるようにしていますね。どこかのベンダーと組んでパッケージを売ろうとしても、そのパートナーがどこから仕入れるのかという点も加味して絵を描かないと、商品が良くても売ってくれないことがあります。
料率やパートナーの利益なんかは良く言われますが、仕入れ方や納品までのプロセスをプランニングすることも同じくらい重要ですね

パートナーさんがとある会社のあるサービスをクライアントに紹介しようとした時に一番ネックになるのって、手間なんですよ。手間がかからずに売れて自分たちの収益になるなら、それが一番パートナーに取って良いと思うんです。

なので、とにかくパートナーに余計な仕事が生まれないように意識しています。パートナーはお客さんのところに行きたいのであって、売るための事務作業をやりたいわけではないので。

今後のパートナー戦略について

今のパートナープログラムや制度に特徴はありますでしょうか?

一つは、取次と卸売で料率が同じになっているところですね。普通は卸売の方が、代金回収やCS的な活動が絡むので、料率が良いんですが、うちでは一緒になっています。

もう一つは、パートナーの契約書がない点ですね。ライセンスを扱う規定やパートナー約款などは全てサイト上にあり、ウェブのフォーム入力で完了するようになっています。

面倒な契約周りの書類を送る手間みたいなのが不要なので、盛り上がったらそのまますぐにパートナーになっていただけるようになっています。また、パートナーのランク制度などもないので、売らなくても料率は変わりません。

色々な面でかなりシンプルに設計されていて、パートナー数を拡大しやすい仕組みになっていますね。

参考:サイト上のパートナー約款

先ほどお話いただいた仕組み以外の部分で、パートナーセールスの中で意識して行っていることはありますでしょうか?

メンバーには良く話をするんですが、パートナーセールスの理想って寝てても受注できることじゃないですか。これがパートナーセールスのゴールだと思っています。

ただ、これを実現するためには超えるステップがいくつかあるんです。

理想形は、パートナーの営業が我々のサービスを理解していて、自分たちで紹介できます!となっている状態。言い換えると、パートナーセールスの能力がパートナーに移植された状態です。

ただ、そこに行くためには、全てを手伝う必要があるんです。手伝うことで信頼関係を構築し、その過程で自分たちのサービスを理解してもらう。

なので、メンバーには申し訳ないんですが、リードを作る作業から、新規案件の商談同席、契約後のサポートなど、全てを最初は伴走するようにしています。

それを経て、パートナーが自走し始めてくれた時が、パートナーセールスとして理想を実現した状態だと思います。

お話しいただいたことを全ての営業に対して行っていると、人員が足りなくなりませんか?

これにも戦略があるんです。やはり大手の販売会社さんだと営業が100人以上いるわけで、全員に売ってもらうなんて、とてもじゃないですが現実的には難しいです。

なので、まずはキーマンと呼ばれる一人に売ってもらうことを目指して、キーマンを探すことから始めるようにしています。

キーマンを見つけたら、その人には徹底的な伴走支援をして売れる状態を作っていく。そうすると、そういうキーマンは営業成績の上位にいるので、周りの人が真似をするようになってくるんですね。そうすると、その企業の中で売れる人が増えていくという流れになります。

代理店の数も大事なんですが、本質的には代理店の中にいる自社サービスを売れる人の数が大事なんです。

これがパートナーセールスのメンバーにはできるようになって欲しいですし、HiwayのようなPRMを使って代理店の中にいる人のステータスや情報を管理していきたいと考えています。

キーマンを見極めるコツはありますでしょうか?

キーマンを見つけるためには営業全員にアタッチしないといけないので、まずはサービスの勉強会を開くようにしています。これは部長や課長に話をすればすぐにでも開くことができると思います。

ただ、我々はそのサービスの勉強会が1時間の枠だった時に、サービス自体の説明には20分くらいしか時間を使わないようにしています。

その後に、具体的にサービスがどのお客さんにどう使われているのか、という事例やユースケースについて20分ほど話をして、営業の方に「近しいお客さんいませんか?」と投げかけるようにしています。

キーマンと言われる営業は常にアンテナを張っているので、こういう時に率先して質問をしてくれるんですね。勉強会が終わった後に、その質問をしてくれた人に対して個別でフォローや伴走支援をしていくようにしています。

勉強会って実をいうと、一方向に自分たちのサービスを認知させる場ではなく、売る気が強いキーマンを探す場なんですよね。

ただ、中には売るための質問ではなく、売れない理由を突いてくる方とかもいるので、そういう方には無理に伴走支援はしないようにしています。

キーマンを見つけて自走してくれるようになったら、その後は何もしなくてもよいのでしょうか?

パートナーは新陳代謝を起こすので、3〜5年のスパンでサービスを売らなくなるタイミングが来ると思っています。これは会社の方針によるものなので、パートナーセールスがどうすることもできないです。

ただ、初めからそういうものだと思って、その期間でどれだけ自社のサービスを扱ってもらえるか、いかにそのピークを大きく長く作れるかを目指すようにしています。

たとえ、一つのパートナーが我々のサービスをあまり売らなくなったとしても、ピークを迎えるパートナーが複数いれば、リスクを最小限に抑えることができます。

パートナーセールスってとにかく面倒臭いんです。パートナーを開拓して、契約をして、案件紹介して、売れるようになって…ステップが長くて、毎回開拓から進めていくと追いつかなくなります。

なので、パートナーの数を増やして、定期的に情報を発信し、反応が出てきたら改めてアクティブ化を図っていき、安定的に次の弾を装填できるようにしています。この施策を実現するためにも、我々はパートナーの数を増やしています。

今後、パートナー関連の施策でやりたいことはありますか?

去年くらいから着手し始めているんですが、サービスを単品ではなく、複合サービスで売ることを促進しています。さらに株式会社ラクスのサービス、つまりは楽楽精算と楽楽明細、楽楽販売とのクロスセルを強化も考えています。

現時点では積極的なクロスセルの施策が実施できていないので、この仕組みや体制をうまく作ることができれば、既存の取引額を2,3倍にできてしまうんですよね。

パートナーセールスとしては、かなり成熟してきたフェーズでないと取り組めないことですが、これから力を入れていきたいテーマですね。

これらの戦略を実現するために、今回の組織改変でパートナーセールスを事業部単位ではなく横串でみる部署が作られました。

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