代理店営業とは?代理店営業職の業務全体像と求められるスキル

2025/4/1

はじめに

代理店営業とは、直販営業と異なり商品やサービスを直接顧客に販売するのではなく、代理店や販売パートナーを通じて市場に拡散させるビジネスモデルを指します。直近では「パートナービジネス」や「パートナーセールス」、「チャネルセールス」と呼ばれることもあります。企業は代理店やパートナー企業と協力することで、大企業や地方、海外顧客など、より広範囲にわたる市場にアクセスすることが可能となりますが、代理店営業の業務全体像や、職種として必要なスキルはわかりづらい部分も多く、専門性が高く属人化しやすい職種のひとつといえます。

この記事では、代理店営業の業務の全体像を解説し、必要なスキルセットについて深掘りしていきます。代理店営業が直面する具体的な課題、日々の業務内容、そして業務を効率よく遂行するための戦略まで、包括的にご紹介していきます。

まずは、代理店営業の基本的な概念から見ていきましょう。

代理店営業の基本的な概念と種類

代理店営業とは、製品やサービスのメーカーが直接消費者に向けて販売するのではなく、代理店を介して市場に展開する販売方法とその部分を担う職種を指します。

代理店営業のプロセスでは、メーカーやサービス提供者が代理店に対して販売権を委託し、代理店がメーカーの代わりに製品の販売を行います。販売の代理と合わせて、製品の提供やサポートを行う形態もあり、代理店にも色々な種類が存在します。

代理店の主な種類

  1. 紹介代理店(Referral Agents)紹介代理店は、主に顧客をビジネスに紹介することで成果報酬を得ます。通常、販売プロセスや交渉には関与せず、メーカーに新規リードや商談機会を提供することが主な役割です。
  2. 再販代理店(Resellers)再販代理店は、製品を仕入れ、再販売することで利益を得ます。物販であれば在庫を抱え、ソフトウェアであれば提案活動まで行うことが多いです。
  3. ディストリビューター(Distributors)ディストリビューターは、一般的に製品の在庫を保持し、マーケティングと販売サポートを提供します。彼らは市場への広範なアクセスと、製品の配布に関する包括的なサービスをメーカーに提供することで、より深いビジネス関係を築きます。
  4. バリューアッドリセラー(Value-Added Resellers, VARs)VARsは、原製品に独自の価値を加えたり、カスタマイズを行ったりして販売します。このプロセスは製品の利用価値を高め、特定の顧客ニーズに合わせることで、差別化を図ります。

代理店営業の業務内容

代理店営業の業務・仕事には、戦略策定〜リレーション(関係性)構築までの5つのステップがあります。

ここでは、それぞれのステップでどのような業務が発生するかをまとめさせていただきます。

※下記画像参照

代理店戦略の策定

代理店戦略の策定のフェーズでは、ベンダーとして代理店戦略のゴールと代理店施策の目標を定めます。ここでは、戦略的な計画の基盤を作るため、市場調査、KGI/KPIの設定、そして代理店プログラムの方針を策定する作業が行われます。

  • 市場調査:競合分析や市場のニーズを評価し、ターゲットとなる代理店を識別します。
  • 戦略の明確化:長期的なビジョンに基づいて、実現可能なKGI/KPIを設定します。
  • パートナープログラムの設計:代理店に提供するサポートのレベルや奨励策を定義します。

新規代理店の募集・開拓

代理店開拓の段階では、具体的なターゲットリストをもとに潜在的な代理店との関係構築を開始します。ここでは、対象代理店へのアプローチや、パートナーシップを提案する初期のコミュニケーションが行われます。

  • ターゲットリストの作成:選定した市場調査に基づき、代理店候補をリストアップします。
  • アプローチ:リストアップされた代理店の特性に合わせたコミュニケーションで関係構築を開始します。
  • プロポジション提供:パートナーのビジネスモデル・顧客属性に合わせた提案を用意し、パートナーシップの価値を代理店に伝えます。

パートナーオンボーディング(代理店育成)

オンボーディング段階では、契約が成立した代理店に対して、製品情報、販売技術、マーケティング戦略などの必要な情報とサポートを提供します。

  • トレーニングとサポート: 製品の特性、市場戦略、販売テクニックに関するトレーニングを実施します。
  • 営業支援ツール: セールスプレゼンテーション資料やマーケティングキットを提供します。
  • コミュニケーションチャネル: 定期的なコミュニケーションを通じて、代理店の疑問や要望に応えます。

代理店アクティブ化

アクティブ化の段階では、代理店が自律的に活動を行うための支援を提供し、積極的な販売促進活動を奨励します。

  • マーケティング活動: 販売促進キャンペーンやイベントの企画を支援します。
  • セールス活動: 目標に基づく販売活動を推進し、成果に応じてインセンティブを提供します。
  • 評価とフィードバック: 定期的なパフォーマンスレビューを行い、改善策を提案します。

リレーション構築・維持

この最終段階では、代理店との関係を長期的に保持し、両者の成長を支援するための活動が行われます。

  • 戦略的ミーティング: 定期的な戦略ミーティングを通じて、目標の進捗を確認し、今後の方針を共有します。
  • パートナーサポート: 代理店が直面する課題に対して迅速なサポートを提供し、パートナーとしての成功をサポートします。

このように、代理店営業は単に販売を委託するだけではなく、代理店が成功するための全面的なサポートを行い、長期的なパートナーシップを構築する一連の段階的なプロセスです。各ステップは次に繋がるため、前のステップがうまくいかなければ、次のステップに移ることはできません。このように、代理店営業担当者は、戦略策定からリレーションの維持に至るまで、多岐にわたる業務を遂行します。

代理店営業が多い業界

代理店営業の業務・仕事内容は先ほど記載した通りですが、代理店営業が活発な業界とそうでない業界があります。

ここでは、代理店営業という手法が活発で、求人が多い業界について簡単にご紹介をします。

保険業界

保険業界は代理店営業が非常に活発です。その要因の一つとして、保険単体ではなく、保険をかける対象とセットで購入を検討する、というものがあります。

例えば、自動車保険であれば、保険をかける対象の自動車がないと検討を進めることができません。そのため、カーディーラーなどの自動車の販売を行う企業が保険の代理店になっていることが多いです。

また、ライフステージの変化に合わせて、様々な保険を組み合わせて提案をするため、地域に根差した代理店などもあります。

保険業界の代理店営業は、こうしたお店に自分たちのサービスの紹介をしたり、販売しやすい仕組みを作るように働きかけていきます。

また、代理店の多くは、一つの保険ではなく、複数の保険を取り扱っていることがほとんどです。その中で代理店の営業担当のマインドシェアを取り、自社サービスを効率的に販売してもらえるように、良好な関係を保つこと求められます。

そのため代理店営業は、代理店と良好な関係を保つことが、大切なミッションとなるでしょう。

携帯販売業界

携帯電話は販売代理店を通して販売されることが大半です。

各地の販売ショップを訪問し、新商品や契約プランなどの説明を行うこともあれば、店舗の販促やポップアップをセットする業務を行うケースもあります。

また、店舗に寄せられるクレーム対応やショップ店員のフォローや面談を行うのも、この業界の代理店営業ならではの業務です。

商品の入れ替わりサイクルが早いことや、接客スキルも求められることも業界の特徴です。

広告業界

広告代理店という言葉があるように、広告のメイン商材であるメディア(広告枠)は広告代理店が販売をしています。リクルートやマイナビなどの求人広告を扱う企業も代理店を抱えています。

代理店営業の担当は、自分たちのメディアの特徴や空き枠、掲載プランなどについて、代理店と密にコミュニケーションをとる必要があります。

IT業界

ネット回線やソフトウェアなどのIT業界でも、代理店を使った営業が活発に行われています。

IT商材は無形商材のため、顧客が商品の良し悪しを判別するのが難しく、信頼のおける企業経由で販売しないと購入されづらい傾向にあります。

また、ソフトウェアなどは、販売後の活用に専門知識が必要なため、販売代理店がその後の保守や運用の支援も行うケースも少なくありません。

地域に密着した販売網を持つ企業や、高い専門性でサポートを行う企業が販売代理店になっていることが多くあります。

代理店営業に必要なスキルセット

代理店との強固な関係を築き、強力なパートナーシップで市場拡大を推進していく代理店営業において成功を収めるためには、直販営業、カスタマーサービス(CS)、マーケティング活動からプロダクトマネジメントまで派生する多岐にわたるスキルが求められます。
代理店に自社の商材を説明して終わり、といった単純な職種ではありません。

1. 高度な交渉スキル(主に新規営業で求められるスキル)

  • 複雑な契約の理解と交渉: 代理店との契約には価格設定、販売目標、販売促進の費用分担など、多くの要素が含まれます。これらの契約条項を理解し、双方にとって公平で利益になる条件を交渉する能力が必要です。
  • 問題解決: 交渉過程での意見の相違をスムーズに解決し、長期的な関係構築に繋げる技術も重要です。

2. コミュニケーションと人間関係スキル(主に既存深耕営業やCS活動で求められるスキル)

  • 効果的なコミュニケーション: 明確かつ効果的なコミュニケーションを通じて、代理店との信頼関係を築くことが重要です。これには、聞くスキルも同等に重要です。
  • 関係構築: 代理店をパートナーと見なし、相互の成功を支援する関係を深めること。これは、信頼と尊重に基づく関係から生まれます。

3. マーケティングと販売促進の能力((主にプロダクトマーケティング職に求められるスキル)

  • 市場分析: 市場のトレンド、競合分析、ターゲット顧客の行動を理解することで、戦略的な販売計画を策定します。
  • 販売戦略の開発: 効果的なプロモーションやマーケティングキャンペーンを計画し、実施する能力。これには、デジタルマーケティングを含む広範なマーケティングスキルが求められることが多いです。
  • プロダクトマネジメント: 製品の特性を理解し、それを市場に適応させるための改善提案ができる能力。

4. プロジェクト管理能力(主にコンサルタントに求められるスキル)

  • タスク管理: 複数のプロジェクトを同時に管理し、それぞれの進行状況を適切にコントロールする能力。
  • 時間管理: 限られた時間の中で最大の成果を出すために、優先順位をつけて効率良く作業を進める能力。

5. テクニカルスキル(主にRevOpsに求められるスキル)

  • CRMとデータ分析: 顧客関係管理(CRM)ツールを活用して、代理店のパフォーマンスデータを収集・分析します。データドリブンな意思決定を支援するための分析スキルも重要です。
  • テクノロジーへの適応: 新しいテクノロジーを学び、それを自身の業務や代理店の業務改善に活用する能力。

代理店営業のやりがい

代理店営業は事業開発営業とも言えるほど、多岐にわたるスキルが求められます。

営業個人としての営業力だけでなく、代理店の担当にうまく販売してもらうためのマネジメント力やマニュアル作成力、業務フローの構築力も求められます。

また、正しい情報を提供するだけでは、代理店の方が動いてくれないケースも多く、信頼関係を構築する力や人間力も必要になります。

代理店営業として、高いスキルが求められる一方で、うまく成果が出せれば一人で営業するより遥かに大きな成果が出せるのも代理店営業のやりがいです。

経営に近いスキルを身につけながら、代理店と共に成果を追いかけることを面白いと思える方は代理店営業が向いているかもしれません。

まとめ

直販営業と代理店営業の違いとして、顧客に直接売るか代理店に売ってもらうかの単純な違いで語られることが多いですが、代理店営業は外部企業である代理店の巻き込みや代理店の営業担当者とのリレーション構築まで、複雑な活動を含んでいます。そのため代理店営業は、ただの営業・販売活動ではなく、戦略的ビジネスパートナーシップの構築です。代理店営業の成功は、単に製品を市場に流通させること以上の意味を持ちます。この業務では、パートナー代理店との強固な関係構築が中心となり、双方のメリットと成功が密接にリンクします。代理店を単なる販売経路と見るのではなく、自社のチームメンバーとして、共に成長し、共に成功を目指すパートナーとして捉えることが重要です。

  • 共同の目標設定: 自社の利益だけでなく、代理店の成長や利益も考慮に入れた目標を設定します。これにより、代理店も同じ目標に向かって努力することがモチベーションとなります。
  • 透明性の確保: すべてのビジネスプロセスにおいて透明性を保ち、代理店が自社の意思決定プロセスに参加している感を持てるようにします。これが信頼関係の強化につながります。
  • リソースの共有: 販売促進ツール、市場データ、トレーニングプログラムなど、必要なリソースを代理店と積極的に共有します。これにより、代理店の販売力強化と自社製品の市場での競争力が向上します。
  • 定期的なコミュニケーション: 定期的なミーティングを通じて、業務の進捗、市場の動向、戦略の調整などを共有します。これにより、互いの活動が同調し、より効果的な市場対応が可能となります。
  • 共感とサポート: 代理店が直面する困難に対して共感を示し、具体的なサポートを提供します。これにより、代理店は困難を乗り越えるための強いサポートを自社に感じ、長期的な関係を築く基盤となります。

代理店とのパートナーシップを成功に導くためには、これらの実用的なアプローチが不可欠です。代理店を自社の一部と捉え、共に市場で成功を収めることが、最終的に自社の持続可能な成長につながるのです。