パートナービジネスキーマンインタビュー 株式会社LayerX 鈴木竜太氏
2024/5/14
ハイウェイでは、「パートナービジネスのキーマンインタビュー」と題して、各企業のパートナービジネスのキーマンから、パートナービジネスの立ち上げや組織作りにどのようにして取り組んできたのかをお伺いしています。
記念すべき第一回は、株式会社LayerX バクラク事業のパートナービジネスについて、バクラク事業部 パートナーアライアンス部 部長の鈴木竜太様にお話をお伺いしました。
鈴木様は前職となるセーフィー株式会社で執行役員 営業副本部長兼VPoS、セールスイネーブルメント室長を務め、株式会社LayerXではその経験を生かし、バクラク事業部 パートナーアライアンス部 部長を務めていらっしゃいます。
本インタビューでは、鈴木様にバクラク事業部のパートナービジネスの歴史や今後の戦略、組織の構想などをお伺いしました。
経歴について
まずは鈴木様の経歴についてお伺いしても良いでしょうか?
1社目は情報・通信事業の会社に入り、そこでパートナービジネスを経験しました。それがパートナービジネスのキャリアの始まりでしたね。
通信事業なので、デベロッパーや不動産会社、量販店の取次があり、その中で「手数料は大体どれぐらいで返すのか?」などの、パートナービジネスの基本ロジックを学びました。
その次に、自分で起業をして、経営全般はもちろんWebマーケティングやWebツールのダイレクトセールスを行っていました。そこでは、広告代理店や個人で動いている方がパートナーになってくれていて、その方とのやりとりの中でベンダー的な動きを経験することができました。
また、海外のWebサービスを国内展開する代理店機能を自社で持っていたので、同時に代理店側の経験もできたのは大きいです。
それらの経験も踏まえて、前職のセーフィー株式会社に入りました。セーフィーは当時から大手のパートナーと組んで市場を取っていくという大方針があったので、そこで今までの知見・ノウハウを生かしながら、中長期でパートナー戦略を考えるという経験をすることができました。
おっしゃっていただいた経歴の中で、パートナービジネス以外の職種や業務も経験されたのでしょうか?
そうですね。基本的には、パートナービジネスだけやってきたというよりは、ダイレクトセールスやマーケティングなど、セールスマーケティング全般を経験してきています。
パートナービジネスって、直販営業の要素もあれば、マーケティングの要素、もっというと、経営視点で事業計画を作る要素もあり、そこをバランスよく経験してきているのが今に生きているのかなと思います。
株式会社LayerXのバクラク事業について
改めてバクラクという事業・サービスについて、教えていただいても良いでしょうか?
バクラクは、企業活動におけるBSMという「Business Spend Management(=企業の支出管理)」を効率化する領域のサービスです。いわゆる、PLで下のところをマネジメントしていこうと言ったものです。例えば、セールスフォースさんだとわかりやすく売上をあげましょう、というサービスですが、その逆でコストを可視化して管理をしていこう、というサービスになります。
今後もプロダクトの数を増やしていく予定ですが、まずは入口として請求書の受け取りから、仕訳して会計ソフトに入れるところ、次に経費精算やワークフローの管理などもできるようになっています。さらに、法人クレジットカードも提供しており、経費精算やEC購買、Web広告費用の精算にも活用できるようになっており、一気通貫で費用の管理ができることも強みです。
最近では、請求書の発行のサービスにも注力しはじめています。2024年秋には郵送費の値上げも予定されていますし、法人間の請求書のやりとり自体も長期的には電子化されていくのが必然なのではないかと考えています。
バクラク事業部のパートナービジネスの歴史
バクラクというと直販のイメージが強いと思いますが、パートナーセールスはどのくらいのタイミングから始められたのでしょうか?
2024年4月現在で、立ち上げてから一年ちょっとくらいですね。
規模としては、人数でいうとパートナーアライアンス部で8名、売上でいうと全社に対して1割程度です。
パートナーの数はどのくらいで、どのようにしてパートナーを開拓されたのでしょうか?
パートナーの数は現在で約250社になっています。
開拓については、パートナーを特徴分けして行っています。
例えば、士業の方はバックオフィス関連のサービスに強く、市場のセンターピンになるので、基本的な認知施策から紹介などの全方位で施策を行って開拓を進めています。
また、士業以外だとバックオフィスのDX支援をしている企業、これは最近割とトレンドになってきていると思います。このような企業様へは、こちらからアプローチするケースもあれば、お問い合わせをいただいてパートナーになっていただくケースもあります。
今後のパートナー戦略について
直近はどのようなパートナー戦略を取られているのでしょうか?
まず、前提としてパートナーが100社いたとしても、パートナーの数字は全体の2割のパートナーが売上の8割を作っていることがほとんどです。
これは、過去の経験してきた企業のどこを見ても大体当てはまっていますし、個人で支援している企業でも同じような傾向になっています。その上で、まずはじめにやることとしては、この2割のパートナーをアクティブ化し、そのパートナーの傾向を分析して、しっかりとした協業における事業計画をつくるとから始めています。
パートナーをやみくもに増やしても、フロントのメンバーが疲弊して、成果が出ないということがよく起きます。
なので、できるだけトップになる可能性を秘めたパートナーを確実にアクティブ化することを足元の一番優先順位を高い施策に置いていますね。
今のような代理店の戦略を立てる際に、LayerXではじめに取り組んだことって何だったのでしょうか?
まずは、自分でサービスの特性を理解し、お客様がそのサービスを導入するなら、誰から買うのか?を一度イメージして仮説を立て、その上で社内のパートナーの実績を見て仮説の検証を行いましたね。
そこから見えてくるものに合わせて、直販のメンバーにもインタビューを実施して、意思決定の際にどういう関係者が出てくるのか、競合はどういうルートで関わってくるのか、それは直販なのかパートナー経由なのか、などを細かく聞いていき、答え合わせをしていきました。
とにかく、購買プロセスの解像度をあげて、そこに影響力が大きそうなプレイヤーを注力するパートナーの候補にしていくという考え方ですね。
セーフィーでも、LayerXでもそうなんですが、パートナーを見ていく軸は大きく3軸くらいかなと思っていまして。
一つ目がサプライチェーン軸。バックオフィスでいうと、予算計画から受発注業務、請求書発行から回収、会計処理、月次決算と流れていきますが会社が大きくなるにつれてこのあたりのバックオフィスの効率化需要が高まるので、その際に現れる人たち。
二つ目が業種業界軸とエリア。例えば、特定の業界で影響力を持っていたり、特定の業種とよく接点を持つ企業の方々ですね。また、地方になるとリアルな接点をもつのはベンチャー企業では人数も少なく難しくなるので。
三つ目はサプライチェーンと少し似てるんですが、企業のイベント軸ですね。資金調達、IPO準備、M&A、事業承継などの企業のイベントタイミングを把握して、そのタイミングキャッチをできる人たち。
この軸で考えていくと、相性の良いパートナーの候補が整理しやすくなると思います。
パートナーセールスをやっていると、とにかくインパクトの大きいパートナーを早く捕まえたいという話になりがちなんですが、この考えを外していると全然売れない可能性があります。
相性の良いパートナーの定義が決まったら、どのようにしてアクティブ化していきますか?
やっぱり数字の積み上げをしていくだけだとお互いのメリットにならないと思っていて、僕は一番最初にアカウントプランを作るようにしています。
単に「サービスを販売して売上を作りましょう」ではなく、「例えば3年後にどうなっていたらお互いにいいのか」を議論して、双方の成長を描けるようにしています。
その際に、定量的な目標だけでなく、定性的な目標のどちらもを作るようにしていますね。
これはかなりエンタープライズセールスに求められることと近いと思っていて、企業調査の基本を徹底してやる必要があると思っています。
まずはパートナー企業のビジネスモデルを理解し、IRなどの公開されている情報から、そのビジネスにどのくらいの人員が関わっていて、一人あたりの売上や粗利の分析、顧客数や販売している商材などの解像度を上げていきます。そして、分析が進んでいくと、売りたい単価感や想定している顧客属性が具体的になっていくので、その上で「自社商品をこう売って欲しい」をまとめたアカウントプランが提案できるようになっていくんですよね。
このレベルで理解をして、パートナーにとってためになる話をしないと、数百、数千の営業マンには動いてもらえないと思っています。
パートナーにアカウントプランの話を持っていくのは、かなり難しい気がしますが、どのようにして進めていますか?
実際に、いきなりアカウントプランを出しても、口先だけでやりましょうとなって、実際の成果に結びつかないことが多いです。
なので、LayerXでは目標の合意形成までに必要なステップやポイントをまとめています。目標の合意は企業の予算策定と同じで、遅くとも3〜5ヶ月くらい前に話し合って決める必要がありますよね。
こちらが立てたアカウントプランを社長や役員が認識して、承認した上でリソース配分が決まっている状態を目指して動くようにしています。
ただ、パートナー開拓した1年目で合意できるのは、私の肌感ですが5%くらいなんですよね。なので、アカウントプランを立てても合意できないことがほとんどです。こちらも私の肌感ですが2年目で10%くらいですかね。
1つポイントとしては、パートナーから目標を提示されるパターンがあるのですが、その場合にでてきた数字が、パートナーがどのくらいの数字を稼いで、どんな事業計画を立てているのかの参考情報になります。
こちらから提案をする場合は、1〜3年後のあるべき姿から逆算した計画を元に、売上や利益、既存顧客や新規顧客数などの数字目標を立てつつ、定性目標として、どんな実績や事例を作るか、どのような企業が導入してくれるとよいのかなども立てるようにしています。
これらをフォーマットにして、各担当が自分のパートナーに対してアカウントプランを作れるように社内では推進しています。
パートナービジネスは思ったよりも定性的な世界なので、少しでも言語化していきたいと最近改めて感じますね。
LayerX パートナーアライアンス部 資料例_パートナーアプローチのフェーズ管理について
今後、パートナー関連の施策でやりたいことはありますか?
まずは、パートナーのランクを数字をもとに整理して、きちんとランク分けをしたいですね。
ランクを決めれば、卸価格や課題が明確になるじゃないですか。パートナーの実績を見れば、将来のトップラインやARRが明確になり、今後トップラインを伸ばすために、どこまで自社の営業費やマーケティングコストを使って良いのかを考えられるようになるかなと。
スピード感もって市場を取りに行きたいという時には、卸値を調整することよりも、マーケティングコストや営業費を調整して、数字を積み上げてパートナーに貢献した方がお互い良いかなと思っています。
今、パートナーの課題はどこですか?パートナー開拓、アクティブ化、仕組み化など色々あるかもしれませんが…
良い意味で全部ですね…(笑)伸び代しかありません。
直販部隊がいてPMFはしているので、今後パートナー経由の数が増えてきた時に向けて、更なるバックオフィスの整備とパートナーに特化したようなテクニカルサポートチームの強化は必要だと思います。
一方でパートナー開拓はしなくちゃいけないんですが、開拓には早くても3ヶ月〜半年くらいかかるので、これは並行して続けていくという感じですね。
実際、開拓したパートナーで実績が始めるのに約1年、本当に立ち上がってくるのは2年目以降というのは間違いなくあるかなと。もちろん会社のサイズにもよりますが、お互いに目標を合意して、社内の組織体制が出来てきて、社内の認知や啓蒙が進んでいくのに、少なくとも1年はかかります。2年目にやっと営業の勝ちパターンが出てきて、パートナーがさらに売ってくれるようになり、指数関数的に数字が上がるのは3年以降かなと。
このあたりの話をすると、パートナービジネスをやらずに直販で頑張って日本全国売っていけば良いんじゃないか、と聞かれることがあります。
しかし我々としては、パートナーセールスの施策はある意味では時間を買っていると思っていて。日本全国の面を取りに行く場合、直販の時間効率を考えると、パートナーの方が圧倒的に良いんですよね。
パートナーじゃないとアプローチ出来ない面というものがあり、SaaSは業界の変化も激しく5年くらいでどんどん新しいサービスが出てくるので、より早く面を抑えに行く必要があると思っています。早く抑えておかないと、シェアを取られてしまいますし、リプレイスするには更に労力がかかります。
極論、直販で面を取れるならパートナーはやらなくても良いんですが、自分達で販路を開拓して、組織を大きくして、マーケティングのPDCAを回していると、おそらく間に合わない。そう考えると、パートナービジネスを強化して、その時間を買った方が遥かに効率よく面を抑えられるかなと思いますし、日本全国、日本経済全体に本当にインパクトを与えるならやはりパートナーと共に実行し共にビジョンを叶えることが必要だと思います。
パートナー組織について
パートナーの組織に関して、こだわりや今後の構想などはありますでしょうか?
全てが1つの部門になるかは分かりませんが、将来的には5つの機能に分けたいと思っています。
一つ目は、全国規模のパートナーを担当する機能ですね。これは、マネージャーや部長クラスのスキルをもったメンバーが、そのパートナーに対して会社経営するくらいの気持ちでつきっきりで入っていく想定です。
二つ目は、それ以外の専門的なパートナーを担当する機能です。パートナー数でいうと、数百社くらいになると思うのですが、ここはどんどん増えていって、細かくなるので、そこをグロースさせるセールスチームですね。地域や業界などの特性などをうまくカバーしていく想定です。
三つ目は、パートナー専用のOps機能ですね。パートナーセールスの一番の特異性はバックオフィスのオペレーションにあると思っています。それをどれだけスムーズに構築できているかは重要と考えています。商談の申請から、サービスの提供フロー、フィーの集計だったり信頼関係につながるので、ここをやれるチームとシステムは必須だと思っています。
そして、四つ目はマーケティング機能ですね。直販のマーケティングを極めて細かくCACやLTVを見れる人が、MDFを活用していくととても効果が出ると思います。パートナー側からみたCACやLTVまで理解して支援できれば、セールス支援以上に強固な関係構築ができると思います。
最後に五つ目は、事業企画や事業計画のサポートができる部隊ですね。さきほど話をしたアカウントプランを各営業が精度高く作っていくのはかなり大変だと思うので、そのあたりをサポートできる部門として、事業計画の策定や数値管理に強いチームを、少人数でもいいので用意したいですね。
かなり細かく組織を分けていく印象ですが、その意図もお伺いしても良いでしょうか?
まずは、パートナーの属性によって、カバレッジがかなり変わってきます。一つ目の部署が担当する全国規模のパートナーだと、全国が営業対象のエリアになってきます。
そうすると、マーケティングがかなり効いてくるんですよね。例えば、テレビCMをやるってなった際には事前情報を共有しておいて、営業と連携をするようにすれば効果が出やすくなります。
一方で、それ以外の地方や業界特化のパートナーだと、彼らの特徴に合わせたサポートが必要になります。例えば、特定の業界のイベントに参加したり、専門媒体に一緒に出たりといった活動が必要になってきます。
また、DXコンサルティングやSIer系のパートナーが増えてくると、技術側の支援も必要になってきます。そう考えると、パートナービジネスで一つの部署・役割という形では、パートナーの求める支援が出来なくなってくるんじゃないかなと思います。
LayerXがパートナーセールスに求める人材ってどんな人ですか?
前提として、ミドルかジュニアで細かく求めるスキルセットは変わってきますが、基本的には直販で営業をした経験は絶対欲しいと思っています。できれば3年程度の法人営業経験が欲しいですね。
これはもうシンプルで、パートナーと一緒にやっていると営業に同行して契約するシーンなどを見せる必要があるじゃないですか?そうすると、単純に自分が営業できないといけないよね、という話で。パートナーセールスだけ経験していると商談化がうまくできなかったり、クロージングがしっかりできないことも少なくありません。
また、パートナー向けの勉強会やツールを渡す際に、リアリティが一気になくなるのでそのあとに続かないこともあります。
単純に直販の営業経験があったとしても、まずは自社商品を理解するために、セールスプロセスは一回見てもらいたいと思っています。
あとは、ミドル層にはマネジメント経験を求めます。人数などにこだわりはありませんがこの経験がないと、1対nのパートナーマネジメントが成り立たないと思います。
これは、必須ではなくWantの要件なんですが、リカーリング系サービスのパートナーセールス経験ですね。あえてSaaSとは言わないんですが、リカーリング系のサービス独特の手数料の返し方や試算方法があるので、そこに対して肌感覚があると良いですね。
LTV感覚を持っていて、最終的な利益を考えながらパートナーの案件をフォローできる人だとかなりありがたいです。
LayerXとして、こんな人に入ってきて欲しいというのはありますか?
事業フェーズによって求める要件は変わりますが、共通して言えるのは、はじめに自分がどう社会貢献したいのかを考えていて、次にそのための手段として企業や仕事を選べる人、と一緒に働きたいですね。
逆の考えで、社会に対してどう貢献したいのかが全く無いままに、会社のブランドやサービスだけをみて選んでいるタイプは合わないかなと思いますね。これはパートナーと共にビジョンを描く時に必須の思いになるのでその考え方を持っていて欲しいと思っています。
この記事を読んでくれている方に伝えたいことはありますか?
LayerXでは現在(2024年5月時点)、上記した将来的な5つの部門に関してパートナーセールスを募集しています。カジュアル面談も実施しているので、これを読んで少しでも興味を持ったり、話を聞いてみたいと思った方はお気軽にご連絡ください!
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