「一次代理店が7社、二次代理店が約300社」の体制で、ほぼすべてをパートナーセールスに集約。Box Japanは、いかにして「パートナーセールス」を通じて急成長を実現したのか。
2024/3/20
販売パートナー(代理店)の開拓、営業連携、情報共有管理……こうした代理店パートナーを介したコミュニケーションは複雑になりがちです。こうしたパートナービジネスの戦略立案から実行を支える、PRM(Partner Relationship Management)ツールを提供するのがハイウェイです。
日本国内には代理店営業を行っている企業が数多くあります。しかし、本来パートナーセールスは事業にレバレッジをかけ急激に成長させる力を持っていますが、それを適切に実現できている事例はそう多くありません。ハイウェイでは、こうしたパートナーセールスの成功例を発信していきたいと考えています。
パートナーセールスによって急成長を遂げた企業の例として、2005年に米国で本社「Box」を設立し、2013年に日本法人を立ち上げた「Box Japan」が挙げられます。クラウドベースでのコンテンツ管理、コラボレーション、およびファイル共有ツールを開発・提供する同社は、現在グローバル全体で社員数約2500名・導入社数は約11.5万社にものぼる大企業となっています。
2015年に導入数百社だったものが、現在は日本国内だけで約16,000社が導入しています。これらのほぼすべてを、7社の一次代理店と、約300社の二次代理店によるパートナー経由で販売しています。そして現在、Box Japanでは複雑化するパートナーセールスを効率化するために、ハイウェイのプロダクトを導入しています。
Box Japanの急成長はいかにして実現されたのでしょうか。Box Japanのパートナーセールス立ち上げ期から関わっている、執行役員 チャネル営業本部長 兼 アライアンス・事業開発部 部長の安達徹也さんにお聞きしました。
「一次代理店が7社、二次代理店が約300社」の体制に至った経緯
──まず、Box Japanがパートナーセールスを採用した経緯についてお聞かせください。
安達:代表の古市克典が日本ではパートナーセールスを主軸に据えることを決めた、と聞いています。グローバルで見た時に、多くの場合はBoxのセールスは直販ビジネスが中心です。間接販売の割合はアメリカもヨーロッパも2割弱で、多くの国では直販を採用しています。
ただ、日本のマーケットは代理店ビジネスを展開するパートナーが情報システムの領域にまで営業で入り込んでいるという特徴があります。それゆえBox Japanも立ち上げ期からいち早く顧客に出会えるよう、パートナーの力をお借りしながらマーケット拡大を目指す方針が決まりました。
また、立ち上げ期のBoxは競合他社と比較して知名度が低く、リソースも潤沢ではありませんでした。日本全国に拠点があるパートナーの営業やマーケティングのリソースを支援いただくことで、ここまで成長を遂げることができました。
──現在パートナーセールスの体制は、一次代理店が7社、二次代理店が約300社にのぼりますよね。こうしたモデルを採用した理由をお聞かせください。
導入社数が急激に伸びたことがまず理由として挙げられます。全てのパートナーがBoxと直接やりとりする一次店モデルでは私たちのリソースが不足します。そこでBoxの販売方法やトレーニング、製品情報のアップデート伝達など、マネジメントにかかわる一部業務を一次代理店に委託する形式をとりました。
また、地方にパートナーが多く存在することも二次店を設けた大きな理由です。例えば、九州で20人ほどの企業が代理店としてソフトウェア販売事業を進めているケースがあります。Boxを販売したいとお声がけいただいても、Box Japanだけでは九州全域まで対応しきれません。そこで各エリアに拠点を持つパートナーに二次店として参加いただき、その力を借りて地方もカバーしています。
パートナーセールスの最大のメリットは、自分たちにはパスがない、あるいはなかなかリーチできないお客様にもコンタクトできること。キーパーソンとコネクションがあるパートナーの人脈を活用させていただけるのは、非常に有難いわけです。
──こうしたパートナーセールスの体制を構築する上で、苦労したポイントはありますか?
一次店と二次店に切り分けて、それぞれに適切なプログラムを展開し、運用していくことです。二次店をハイヤリングして全国に拡大していくためには、適切に運用するためのプログラムが必要です。米国や欧州のBoxでは全て一次店契約でグレード分けをしているのですが、立ち上げ期のリソースではすべてのパートナーを一次店としてオペレーションを担うのは難しいため、仕組みの確立が急務の状況でした。プログラムの中には、一次店に対して二次店のマネジメントや育成に協力してもらえる仕組みを盛り込みました。
パートナーセールスは最初の立ち上げ期がものすごく重要かつ大変でもあります。しかし、一度軌道に乗れば、あとはパートナーが「ミニ・Box Japan」となって、案件づくりから販売、導入支援、トラブル対応のカスタマーサクセスまで担ってくれるのです。そのおかげで、私たちは少ない労力、短期間で最大の成果を出せたのだと思います。
「直販」と「間接販売」を中途半端に併存させずほぼすべてをパートナーセールスに集約する戦略
──代理店販売と、より利益率の高い直販を併用する体制にもできたはずです。しかし、現在はパートナーセールスがほぼすべてを占めていますよね。
はい。国内外でパートナーモデルと併用されている企業も増えてきているとは思うのですが、中途半端に併存させてしまうと、両方のいいところを損ねてしまう可能性があります。
わかりやすい例としては、「パートナーが営業していた顧客が、本社に問い合わせてみたら直販営業が出てきて、それまでの見積もりより安い金額で販売した」というケースです。パートナーが営業している案件を、直販が安い金額で売って競合し、パートナーからの信頼を損なうケースはよく発生します。Box Japanは、最初からパートナーセールスを100%というビジネスモデルで開始したことが、パートナーから信頼を得られた一つの大きな要因であると考えています。
──パートナーセールスに全ての売上を賭ける覚悟だからこそ、信頼関係が何よりも大事になるわけですね。
はい。私たちがパートナーと信頼関係を築くために行っている活動のひとつが、Boxのアカウント営業とパートナーとの連携および共同提案です。この仕組みでは、Boxの営業が自身で創出した案件も、最終的にはパートナーを通じてお客様に販売します。
また、もうひとつの施策が「DR(Deal Registration)制度」です。これは、いわば「案件登録制度」で、最初にBoxを顧客へ提案してくれたパートナー1社のみに優先的に案件対応の権利を付与する制度です。“早い者勝ち”になりますから、パートナー同士の競争を促す制度であるとも言えるでしょう。他社に先を越されないように案件登録のために動いてくれるため、案件数を急速に拡大させる後押しになったと思います。
また、DR制度はBoxが案件を早期に認識し、パートナーの間で販売先がバッティングして取り合わないようにするための“商流の交通整理”という点でも役立ちます。加えてパートナーがもつ案件を可視化することで、Boxとしてはパイプラインとして把握でき、営業進捗の確認や予測ができます。
誰がどの案件をもっていて、いつ決まりそうか。それがわかれば、Boxのハイタッチ営業がパートナーと一緒にお客様先まで出向き、共同提案してクローズする動き方もできます。こうした施策がワークしたことで、Boxのより速い成長が実現したと考えています。
パートナーと「ホワイトスペース」を可視化・共有するPRMツールの有効性
──営業面以外でのパートナーセールスのメリットはありますか?
契約後には導入のデリバリーが必要になりますが、そこでもパートナーセールスの利点を活用できます。新規取引は口座開設やお客様の与信、債権回収などの業務が発生します。また、公共入札の案件では、その権利がなければ入札に参加すらできません。こうした負荷やリスクを、パートナーと協力して進める方法は非常に効率的だと捉えています。
──Box Japanではハイウェイのプロダクトも導入されていますが、具体的にどのように活用されているのでしょうか?
前提として、Boxではパートナーセールスの効率化のために、海外のPRMツールも併用しています。例えば、DR制度の案件登録制度の運用などはPRMツールを活用しています。その他にも、資料などのコンテンツの共有は主にBoxの自社製品を使って運用しています。
その上で、ハイウェイの製品はまだ営業ができていない「ホワイトスペース」を可視化するためのツールとして活用しています。業務でパートナーと会話していると、さまざまなパートナーが別々の場所で同じような行動をしていると気づきました。ターゲットとする見込み顧客にも重なりが生じます。
例えば、パートナーから共有された社名データなどをハイウェイに取り込むと、Boxの顧客データと連携し、「このお客様はまだ導入実績がありません」と表示してくれます。未導入の企業の当たりをつけることで、顧客リストを精査する時間が削減され、生産性が上がります。
私たちの一次店・二次店もハイウェイのようなツールと接続されていけば、まだリーチできていない見込み顧客のホワイトスペースをお互いに認識し、効率的に新規顧客開拓ができるはずです。
「説明商材」であるBoxを売る工夫
──ただ、パートナーと代理店販売の契約はできても、そのあと注力商材として積極的に販売してくれるかは別の話だと思います。どのようにパートナーをイネーブルメントしているのでしょう?
Boxは商談が大規模になるケースが多いのですが、大規模商談においてはより多くの説明が必要になると私は捉えています。たとえば、パソコンを買う際にはスペックを見て自分で購入の選択をできると思います。しかし、Boxの場合、大規模な導入になればなるほど、多様な側面から製品について説明をする必要が出てきます。当然ながらパートナーにとっては、一つの商材に対して知識を蓄えるのにそこまで時間をかけられないという側面があります。そこで、Boxの専門家であるハイタッチ営業が同行して案件をサポートします。そうすることで案件の成約確度が格段に上がり、商談の規模が飛躍的に大きくなります。
もう一点、イネーブルメントの観点でこだわっているのが、パートナーの社内でBoxを標準採用してもらうことです。営業が「自分たちも使っています」「安心してください」と腹落ちして言えるからこそお客様への説得力が増しますし、全社で導入してくださっているパートナーさんは、やはり案件数や売上、導入実績が安定的に伸びています。
──“説明商材”で良さを伝えるのが難しいからこそ、パートナーが「自社でも使ってます」と言えることが営業していく上で重要になるんですね。これは販売後のCS担当者にも同じことが言えそうです。
そうですね。パートナーのCS担当者は顧客のBox導入後に操作方法やユースケースを伝えていくことになりますが、その際も自社でBoxを使っているだけで説明の濃さや説得力が違いますし、その結果、顧客満足度にもよい影響を与えてくれます。パートナーに使ってもらうことが、一番確実かつ効率的で、かつ「仲間」としてよい関係を築く方法なんだと思いますね。