「パートナーエコシステム」概論 企業間営業連携クラウドがもたらす、BtoBビジネスの未来

2023/7/15

いま、「パートナーエコシステム」という言葉が注目を集めています。

その背景には、自社のマーケットシェアを広げるために新規顧客の開拓に注力したい、と考える企業が増えていることがあります。

しかし、新規顧客の開拓において、自社の力だけでは限界を感じている企業も少なくありません。営業の現場では長年培われてきた企業や個人同士の関係なども影響するため、「売り込みをしたくても既存の関係性によってできない」といったシチュエーションに頻繁に遭遇します。

こうした課題をパートナーシップを組んだ者同士で協力しあう「エコシステム」の発想から解決する考え方が登場してきました。代理店営業において、なぜ今「パートナーエコシステム」が重要なのでしょうか。近年立ち上がりつつある、BtoBビジネスの新たな手法についてご説明します。

アナログな文化が残る、代理店営業

企業の営業活動の世界に革新が起こったのは、2000年頃のこと。インターネットの普及やデジタル革命により、顧客管理システムが登場しました。それ以降、顧客とのコミュニケーションをデータ化し、営業のステータスや履歴をオンライン上で管理するというアプローチが広がりはじめました。

特に2010年代以降は、とりわけ直販において顧客データから効率的な営業活動を行う“科学的な営業”の探求が重ねられ、「Costomer Relationship Management(CRM)」や「Sales Force Automation(SFA)」、「Marketing Automation(MA)」といったさまざまなツールが開発されます。やがてその発想は代理店営業にも浸透し、「Partner Relationship Management(PRM)」と呼ばれる概念が生まれます。

販売代理店(リセラー)との関係性をデータ化し、よりデータドリブンに代理店営業を進めるという考え方から、以後、さまざまなPRMツールが登場します。特に2017年、SalesforceがPRMをリリースしたことで大きく認知度が向上。CRMやSFAの存在が直販営業の現場の風景を大きく変えたように、これによって代理店営業の現場も効率化されていく……そう考えられていました。

しかし、現代の代理店営業の現場を見渡すと、依然として変わらずアナログな管理方法が残っています。なぜ代理店営業の現場には、“科学的な営業”がうまく定着していないのでしょうか。その課題を探るために、まずは現状を整理をしてみます。

メーカーが代理店営業を立ち上げる過程には大別すると以下の3つのフェーズがあります。

  1. 代理店を見つけるフェーズ
  2. 一緒に案件を生み出すフェーズ
  3. 代理店の営業担当のアクションの質を上げるフェーズ

「1. 代理店を見つけるフェーズ」では、代理店の候補になりそうな企業に問い合わせをして「弊社のサービスと相性が良いか?どんな企業が顧客にいるか?」と聞いて回ります。自社のサービスと相性が良く、ターゲット企業と繋がれそうな代理店を見つけたら、代理店や担当者と信頼関係を築きつつ、パートナーシップの契約を進めていきます。

「2. 一緒に案件を生み出すフェーズ」では、お互いに合意したルールをもとに、自社が持つ情報を部分的に開示します。多くの場合、ここではお互いに提案可能性が高そうな企業やアプローチしたい企業を提示し、それらを協議した上で、共同で戦略を立てたり、一緒に営業をかけるリストをつくったりします。

「3. 代理店の営業担当のアクションの質を上げるフェーズ」では、一緒に立てた戦略や案件リストを営業担当者が実行していきます。その際に、メーカー企業から営業資料が共有され、代わりに代理店側に案件の進捗報告が求められるといったことが起こっています。

1.「マネジメント」から「エコシステム」へと変わる代理店営業

しかし、こうして時間をかけて構築されたパートナーシップの多くは、うまくワークせずに終わることが多いのが現状です。つまり、全く動いていない「ゴーストパートナー」が生まれているわけです。

一つの理由は、「パートナーアライアンスを組みましょう」と合意したはいいものの、次の動きが決まらずに、抽象的な議論で終わってしまうことです。現場レベルで実行できる座組や具体的な行動が固まっていなければ、営業担当も動き方のイメージが湧かず、相性の良し悪しも分からないまま時間とともにお互いの熱量が下がっていきます。

もう一つの理由は、パートナーを「マネジメントする」という考え方です。PRMツールの多くがメーカーから販売代理店に向けて導入されるように、「パートナー」と言いながらも、その実はマネジメント“する側” “される側”という公平ではない構造が生まれてしまっています。

メーカーの下に販売代理店が置かれて、進捗状況を管理され報告を義務付けられる……このような状態はメーカー側も情報を共有しているとはいえ、上下関係が固定化されているため、「パートナー」と呼んで販売を推進する体制には無理が生じます。何よりも、多くの代理店はこうした関係性を嫌がります。

どうすれば、お互いが協力しあえる関係性を「パートナーシップ」という言葉の下でデザインできるのでしょうか。そこで必要とされるのが、「マネジメント」から「エコシステム」への発想転換です。

本来望ましい、信頼関係の伴った「パートナー」とは、お互いの「手の内を見せ合える」関係性であるはずです。

そのために必要なのは、エコシステムに関係する人が同じ目標を共有しており、各企業の強み(コアコンピタンス)に合わせて、役割分担を明確化していること。

その上でお互いにコミュニケーションをとったり、リアルタイムに情報を共有をすること。どこかの企業が利益を独占したり、割りの合わない目にあったりせず、全体の利益のために協調していくこと……「パートナーエコシステム」という考え方には、根底にこうした発想があります。

パートナーシップの構築に失敗するよくあるケースとして、「契約を結んでも、お互いが情報を出そうとせず進展しない」という状況があります。お互いに信頼関係がうまく構築できていなければ、手の内が見せ合えず、結果として連携が前進しません。一緒に営業をかける顧客名をバイネームで教え合えるほどの信頼関係と、双方に利益がある関係が構築できて初めて、次のベストな打ち手を一緒に考えていくことができます。

メーカーは売れる商材とそのためのサポートを提供し、代理店は顧客基盤や関係性をお互いに提供する。双方が協力することで、新しいサービスが市場に効率的にアクセスでき、お互いの事業が伸びていく。

こうした「共同営業」や「共同マーケティング」と呼べるような関係性をいかに築くか。それが2020年代以降の代理店営業の鍵を握っていくはずです。

2.システム(API)連携を起点とした、顧客基盤の拡大

また、「パートナーエコシステム」という考え方は、メーカーと代理店の関係性のみにとどまりません。メーカー同士の連携もまた、マーケットや市場認知度の拡大に大きく寄与します。

最もわかりやすい例として挙げられるのが、「Salesforce AppExchange」です。

このプラットフォームでは、Salesforceを中心にさまざまなメーカーがアプリを開発・提供しており、Salesforceをアプリで拡張することであらゆる業種・業務で使えるようになります。

もしあなたが自社製品(システム)を持っているのであれば、Salesforce以外にもパートナーとなりうる製品を探し、API経由で組み合わせることで顧客にメリットをもたらすことができます。

その一つは利便性向上です。自社アプリを単体で導入してもらうよりも、他の製品と連携して導入してもらったほうが、より顧客のできること(製品の提供価値)が広がります。

また、システム同士を連携させることで、解約率が低下します。

複数の製品が連携していることで利用頻度が上がり、より顧客にとって「欠かせない」システムになるからです。さらに、システム入れ替えが大規模化して費用的なコストや、現場レベルでのオペレーション変更コストが大きくなるため、一度システムが定着すれば長期にわたり安定して使ってもらえる状態を生み出せます。

このようなメーカー同士の「パートナーエコシステム」は顧客基盤をシェアしあうため、双方にとって新たな顧客獲得の相乗効果が生まれます。営業や新規顧客開拓のあり方の視野をエコシステムという観点から広げることで、より幅広い打ち手が可能となるわけです。

3.より広義のパートナーエコシステムへ

ここまで説明してきたパートナーエコシステムは、言い換えれば、「自社でカバーできない機能を、他者の力を借りて補完しあうことで強化する方法」とも言えます。例えば、営業の力が足りない場合に、外部の力を借りて補完する方法が「セールスパートナー」だと考えられるでしょう。

しかしながら、販売活動やシステム導入は当然ながら営業だけでは完結しません。マーケティングやインサイドセールス、カスタマーサクセスまで、“外部の他者からリソースを借りる”という考え方には多種多様な形があります。また、前章でお話したAPI経由のシステム連携は、自社の開発機能やプロダクトの足りない機能を他社から借りている状況だとも捉えられます。

こうした“広義”のパートナーエコシステムの考え方は、日本でも近年現れはじめています。

例えば、シスコシステムズが日本国内において創設したパートナー制度「エコシステム パートナー プログラム」はその例として挙げられるでしょう。同社は、パートナーシップに「インテグレーター」「プロバイダー」「デベロッパー」「アドバイザー」という4つのロールを定めることで、共創を推進する体制を打ち出しています

従来の“リセラー型”のパートナーに加えて、より広範なエコパートナーシップを形成し、事業開発からセールス、マーケティングまでを共同で実施する……こうして自社を中心に一種のプラットフォームを形成することで、提供できるソリューションの拡大とDXの加速を狙うのが同社の戦略です。

また、近年ではメーカーが直販したSaaS製品の導入支援やカスタマーサクセスのプロセスを、「インプリベンダー(実装や機能の組み込みを行うベンダー)」の専門企業が担う事例が増えています。本社から共有された製品マニュアルやオンボーディング事例、アップデート情報などをもとに、導入からトレーニングまでを担います。こうした専門企業も、広範の「パートナーエコシステム」の中に包含されるでしょう。

その他にも、ソフトウェアを使う上で直接コミュニケーションする外部の専門家もエコシステムの一部と考えられます。例えば、会計管理ソフト上でユーザーをサポートしてくれる税理士や、HR系ソフトにおける社労士などは、お世話になった経験がある人は多いはずです。また、導入前後にはシステムの裏側で導入・運用を担当するエンジニアなども活躍しており、こうした幅広い人々を広く巻き込んでパートナーシップを形成していくことで、営業だけでなく製品のトータルの力が強化されていきます。

いま、企業活動は「競争」から「共創」へと移行しています。自分たちだけではできないことを、外部企業やシステム、専門家を巻き込みながら相互に補完しあって進めていくことで、企業全体としての収益を上げていくことができる。

これがパートナーエコシステムの基本的な考え方です。

もちろん、エコシステムの拡大には、さまざまな困難もつきものです。ハイウェイでは、「パートナーエコシステムを構築する際の困難をいかに解決するか」という点にフォーカスし、専用のソリューションを開発しています。

ご興味のある方は、ぜひお問い合わせください。

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