インバウンド・アウトバウンドから「ニアバウンド」へ。古くて新しいデータドリブンによる営業手法を解説

2023/8/15

いま、新しい営業手法として、既存の主な手法である直販営業以外にも代理店営業を中心とした「ニアバウンド・セールス」という考え方が登場しています。

人脈や知り合いの“ツテ”、自社のステークホルダーとの関係性などを活用して、「紹介」によって営業活動を行う……一見すると古典的に思えるこの営業手法は、デジタル化された営業の普及によって再び脚光を浴びつつあります。

では、「ニアバウンド」とはいかなるものか。本記事では営業手法の変遷の歴史を振り返りながらその実践方法を解説します。

「ニアバウンド」とは何か?

「ニアバウンド」とは、企業が他社などとパートナーを組んで市場を開拓していく営業手法です。状況に応じて最適なパートナーと協力して声掛けをすることで、お互いに信頼関係を生み出しやすい状態で接触する。こうして良好な関係性を構築していくことで、市場を拡大していくのがニアバウンドの考え方です。

2020年代に「ニアバウンド」が台頭してきた背景には、約20年以上にも及ぶ営業のデジタル化の歴史があります。2000年代に「アウトバウンド」という言葉が生まれ、その潮流はやがてコンテンツを活用した「インバウンド」へと変遷。そして、インバウンドでも届かないターゲットへアプローチをするため、現在の「ニアバウンド」が生まれてきた流れがあります。

アウトバウンドからインバウンド、そしてニアバウンドへ

まず、インターネットやコンピューターが普及しはじめた2000年代から「アウトバウンド」が提唱されはじめました。「アウトバウンド」とは企業側から顧客へとメールや電話などでアプローチする“プッシュ型”の営業手法であり、昔ながらの訪問営業やテレアポなどが例として挙げられます。しかし、新たなテクノロジーの登場後すぐに営業の効率が改善されたわけではなく、「担当者が地道に検索して新規営業リストを作成し、数十件の電話営業をかける」というアナログな動作は変わりませんでした。

その後、Salesforceなどさまざまな営業ツールの登場により、営業活動の頻度や内容を記録できるようになることで、データをもとにした客観的な営業活動が定着していきました。いち早くデータ活用をした企業は、ターゲットとする企業動向を把握し、より正確な予測を立てながら収益を伸ばせるようになりました。

しかし、新たなアウトバウンドツールの導入により営業の量や質が改善されても、ノルマの達成率が大きく上がらないという事態が起こります。なぜなら、多くの企業は知らない企業から突然連絡されることを好まず、商談時の熱量が低いことが多いからです。アウトバウンドの技術や知識が成熟しても、その問題は解決されませんでした。

そこで次に訪れたのが、2010年代以降の「インバウンド」の時代です。プッシュ型のアナログな営業により接触のない顧客に力技でアプローチするのではなく、コンテンツマーケティングによって顧客を「ナーチャリング(育成)」することが重要であると提唱されます。それにより、SEOやブログ、SNSによるリード獲得や、MAツールを活用したリードナーチャリングの手法や技術が研究され広まりました。

また、マーケティングとセールスの分業により販売活動の生産性も向上しました。セールスはSFAの浸透でよりデータ化が進展し、その一方で「マーケティングオートメーション(MA)」のツールが登場。2010年から2022年にかけて、米国ではMAを導入する企業数は数百社未満から10,000社以上にまで増加したといいます。これにより、マーケティング担当者は顧客ごとに適した対応や、自動化によって業務効率化が可能になりました。

しかし、アウトバウンドからインバウンドへと営業手法のトレンドが変わっても、「人間が認知できる量には限界がある」という新しい問題が今度は浮き彫りになります。どれだけパーソナライズドされた質が高い情報でも、人間は多くの情報を受け取ると情報過多に陥っています。コンテンツマーケティングでより多くの質の高い情報が提供できても、むしろ顧客が求めているのは「無関係な情報をフィルタリングする」ことなのが明らかになったわけです。

たくさん売り込みをかけるものの、相手の熱量が低くうまくいきづらかったアウトバウンドの時代。商談前に興味喚起のアプローチを施して顧客を“来たくさせる”ものの、情報が顧客になかなか届かなかったインバウンドの時代。これらの反省を踏まえて、2020年代以降に「ニアバウンド」が注目を集め始めることとなります。

ニアバウンドの実践方法

それでは、「ニアバウンド」はどのように実践されるのでしょうか。

企業には顧客だけでなく、出資や貸付をしている投資家や金融機関、その企業のアドバイザーまで、さまざまなステークホルダーが存在します。こうしたステークホルダーから繋がりや信頼関係がある、紹介可能な企業先のデータを提供してもらう。それを自社の営業リストと照らし合わせながら、重なりあう企業を見つけて紹介を受けることが、最初のニアバウンドの実践方法です。

こうしたプロセスを実現するためのツールとして、近年、米国や欧州を中心に企業同士が顧客基盤を共有して連携できる機能をもつ「アカウントマッピングソフトウェア」を提供する企業が増えおり、アメリカの「Crossbeam」やフランスの「Reveal」が象徴的です。これらのサービスを使えば、営業担当者は自分の営業リスト上に、ニアバウンドによって紹介からアプローチできる顧客情報を重ねて営業上の新しい選択肢を生み出せます。

同じ企業のグループ会社同士での顧客情報の共有や、顧客やユーザーの「アンバサダー」から宣伝や紹介を受けるなど、ニアバウンドには数多くのチャネルがあります。こうした複雑かつ多種多様な繋がりをツール上で管理することで、より効率的な営業の打ち手が可能になります。

実行する時に気を付けるべきこと

ニアバウンドでの営業活動の基礎は、「お互いの持つデータを共有する」すなわちアカウントマッピングすることだと言えます。ここで最初に気を付けるべきなのは、お互いに利益がある関係性の構築と、個人情報保護法などの法律や倫理的なルールに抵触しないよう動くことです。

データを共有(照合)する際には、ルールやガイドラインを定める必要があります。「どのようなフィールド/オブジェクトを公開しても構わないか?」「共有したくないものは何か?」こうした問いについて双方でしっかり話し合い、事前に取り決めをしておくことが大切になります。

また、双方がデータを出し渋りせず、正確に共有することも重要です。パートナーの片側がデータ提供に対して慎重になり、データが十分に示されないことがあります。具体的なアクションを起こすために必要なデータが不足すると、意思決定の質が低下するため、情報の出し渋りが起こらないような信頼関係を事前に構築することが求められます。

最後に、データやオペレーションを整理し、社内のメンバーが使えるようにすることも重要です。営業やマーケティング、カスタマーサクセスなどがデータを使いこなしてインサイトが得られることで、データの効果が最大化されるからです。それを実現するために、CRMやSFAなどのシステム上にきちんとデータが入力され、レポートに反映されるためのオペレーション設計も大切になります。

まとめ

アウトバウンドからインバウンド、そしてニアバウンドへと、セールスプロセスは進化し続けています。「古くて新しい」営業手法として、古典的な紹介営業を超えて、よりデータドリブンなニアバウンドが今後の市場競争の成否の鍵を握るかもしれません。

ハイウェイは、日本でいち早くニアバウンドの概念を導入し、実践可能なツールを提供しています。より効率的な営業のあり方を目指して、今後もニアバウンドの海外での具体的な事例や実行方法などを発信していきますので、ご興味があればお問い合せください。

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