SaaS企業におけるパートナーセールスとは?重要性や販売代理店開拓などのポイントを紹介

2024/3/19

近年、SaaS企業におけるパートナーセールスの重要性が高まってきています。

「セールスチームを増やしたが、人数対売上が下がってきている」「マーケティング施策でアプローチできない顧客を獲得したい」とお考えの方には、パートナーセールスがおすすめです。

SaaS企業でパートナーセールスに取り組む企業が増えてきており、国内でも成功事例が出てきています。

本記事では、SaaS企業におけるパートナーセールスとは、その重要性や、販売代理店を開拓する際のポイントをご紹介します。

SaaS企業でパートナーセールスを始めようと思っている方や、立ち上げたばかりの方は参考にしてください。

SaaSパートナーセールスの基礎知識

パートナーセールスは、企業が製品やサービスの流通を拡大するために、他の企業とパートナーシップを組んで共同で販売活動を行う手法です。このアプローチは、新規顧客へのアクセス拡大、販売チャネルの多様化、ブランドの向上など、多くの利点をもたらします。

また、販売代理店開拓により、地域ごとの特定市場に特化した知識を持つパートナーを得ることができ、効率的に市場浸透を図ることができます。

現在、パートナーセールスはSaaS事業の成長において不可欠な戦略の一つとなっています。

パートナーセールスの定義とは

パートナーセールスとは、自社のサービスまたは製品を他の企業や個人を通じて行えるように支援をする手法・職種を指します。

自社のセールス(直接販売)と違い、パートナー企業と協力して自社の商品を販売するセールス(代理店販売)を指し、代理店営業やアライアンスセールスと呼ばれることもあります。

海外では販売チャネルを持つパートナーと協力して営業をするという意味で「チャネルセールス」と呼ばれていることが多いです。

パートナーセールスを行うことにより、SaaS企業は自社リソースを直接販売やプロダクト開発に集中させることができます。また、パートナー企業がもたらす顧客基盤や専門知識を活用することも可能になります。この手法は、ビジネスの成長を加速させ、より広範な市場に製品を普及させるために不可欠です。

SaaS業界におけるパートナーセールスの役割

SaaSに関わらず、パートナーセールスの主な役割は、パートナー企業(販売代理店)を開拓し、そのパートナーがエンドユーザーに自分達の商材を営業しやすいように、情報提供などの支援をすることです。

販売代理店やリセラーなどのパートナーを開拓し、軌道に載せることで、コスト効率の良いマーケティング手法としても機能し、長期的なビジネス成長に寄与します。

販売代理店との連携によっては、地域や業界特有のニーズに合わせたカスタマイズやパッケージも提供することがあります。PMF後のSaaSをより広い市場に展開する際には重要度の高い戦略と言えるでしょう。

パートナーセールスのメカニズムとは

パートナーセールスにおいて、SaaS事業者(ベンダー)は、代理店に製品知識の提供、販売のインセンティブ、サポート等の役割を担います。

販売代理店(リセラー)は自らの顧客ネットワークと営業力を活用し、SaaS製品を販売し、自社の収益の拡大を図ります。

リセラー(代理店)はどんなサービス・製品でも扱うわけではなく、下記のどれかにマッチするサービス・製品を扱うことで、効率的に収益を上げることが多くなっています。

  • 解決できる顧客の課題が似ている

ex.マーケティングの支援をしている企業がマーケティングの課題を解決するためにMAツールの導入支援を行っている

  • 顧客セグメントが似ている

ex.複合機の販売企業が情報システム部門が導入を判断するPCやセキュリティソフト、クラウドサービスを扱っている

  • サービス提供プロセスが似ている

ex.税理士が経理・会計業務の支援と併せて、クラウド会計ソフトの紹介を行っている

パートナーセールスは、顧客ネットワークや営業・サポートリソースを多く持っている代理店の力を借りて、効率的に成果を上げる仕組みとも言えます。

SaaSパートナーセールスのメリットと導入効果

SaaS企業にとって、パートナーセールスは多くのメリットがあります。

まず、販売代理店を開拓することにより、自社の営業リソースではアプローチできなかった市場へのアクセスが可能になります。

特に地方・小規模事業者は、デジタルツールの導入の際に、ダイレクトセールスだけで導入判断をする割合は全体の24%となっており、パートナーの存在が欠かせなくなっています。

[@portabletext/react] Unknown block type "image", specify a component for it in the `components.types` prop

引用:中小企業庁 “中小企業の身の丈に応じた ITツールの普及促進について (討議用資料)”https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/smartsme/2019/191010smartsme02.pdf(2024/03/14)

また、直接エンドユーザーに営業をするセールスと比べて、顧客の課題が見えづらいなどのネックがある一方で、パートナーセールス一人の支援で多くのパートナー企業が営業を行い、大きな成果を得られる事もあります。
直接販売に比べてレバレッジが効きやすいのもパートナーセールスのメリットです。

パートナーセールスが注目されている背景

先述のように、パートナーセールスは販売代理店を通じて、新規顧客獲得のチャネルを広げ、地域や特定業界に特化したセールス活動を効率的に展開できるため、SaaS企業の拡大に欠かせない要素となっています。

SaaS上場企業の多くがパートナーセールスに取り組んでいることもパートナーセールスの重要性を後押ししています。

また、indeedの「パートナーセールス」に関する求人は2023年11月時点で4,047だったのに対して、2024年3月時点で9,017と倍以上に増えています。

[@portabletext/react] Unknown block type "image", specify a component for it in the `components.types` prop

引用:indeed https://jp.indeed.com/(2024/03/14)

このことからも、パートナーセールス全体への注目度が上がってきていることがわかります。

SaaSパートナーセールスの成功戦略

まずは、事業ドメインや市場のターゲットが合致するパートナーを選定することが基本です。海外では、アライアンスを組む前にお互いの顧客と見込み顧客のデータを突合させて、パートナーの価値や顧客ベースの重複をチェックし、パートナーとしての相性を検証するパートナーアカウントマッピングという手法もあります。

[@portabletext/react] Unknown block type "image", specify a component for it in the `components.types` prop

パートナーとのマーケティング計画を策定するだけでなく、トレーニングや情報共有を通じて、パートナーの製品知識と販売スキルを高め、強固な関係を築くことも必要です。

トレーニングや情報共有では、パートナーの営業一人一人に「自分の担当だと、〇〇に提案すると価値がありそう」と具体的な提案のイメージを持ってもらうことが重要です。

そのため、営業資料を提供するだけではなく、パートナーの顧客ネットワークにあわせた事例やトークスクリプトを展開することが重要になってきます。

最後に、適切な報酬体系を設けて、相互の成長と利益を促進させることも必要になります。パートナーの数が一定数を超えてきたタイミングで、パートナープログラムを構築し、成果を出しているパートナーには適切なリターンが、新しくパートナーになった企業は成果を出すためのモチベーションが生まれるような設計も必要になります。

パートナーとの関係構築と維持のポイント

パートナーセールスの成功には、パートナーとの関係構築が不可欠です。

関係構築の前提として、「販売力が高い販売代理店は新しいサービス・製品を販売する必然性がない」ということを理解しておく必要があります。

そんな中で自分達のサービス・製品を優先的に販売をしてもらうためには、成功事例が必要になります。とにかく、一件でも受注の実績を作ることが重要です。

パートナーセールスを軌道に乗せている企業は、パートナーが自走できるようになるまで自分達が案件をパスするケースもあるといいます。

SaaSパートナーセールスの戦略

SaaSにおいてパートナーセールスは、製品特性や市場ニーズに合わせた戦略展開が求められます。例えば、CRMを提供する場合は、ITコンサルタントやSIerとの連携が効果的です。これにより、販売代理店は製品の専門知識を持ち、顧客の課題解決に貢献することができます。各商材のドメインや特性に応じたパートナー戦略を展開することで、SaaS企業は市場浸透を加速させ、収益の拡大が可能になります。

Box Japan

パートナーセールスによって急成長を遂げた企業の例として、2005年に米国で本社「Box」を設立し、2013年に日本法人を立ち上げた「Box Japan」があります。クラウドベースでのコンテンツ管理、コラボレーション、およびファイル共有ツールを開発・提供する同社は、現在グローバル全体で社員数約2500名・導入社数は約11.5万社にものぼる大企業となっています。

現在は日本国内だけで約16,000社が導入しており、これらのほぼすべてを、7社の一次代理店と、約300社の二次代理店によるパートナー経由で販売しています。

Box Japanはパートナーセールスにリソースを集中させています。

販売代理店との関係を構築するためにも、Boxのアカウント営業とパートナーとの連携および共同提案を行っています。この仕組みでは、Boxの営業が自身で創出した案件も、最終的にはパートナーを通じてお客様に販売します。

また、最初にBoxを顧客へ提案し案件化してくれたパートナー1社のみに優先的に案件対応する権利を付与するDR制度というものも設けています。

下記の記事でも詳細をご紹介しております。

https://product.hiway.app/colmun/box-interview

LINE WORKS

パートナーセールスによって、地方やIT以外の業界のユーザーを開拓し、急成長を遂げた企業の例として、「LINE WORKS」があります。

同社は企業向けのクラウド型ビジネスチャットツールとして、2024年1月時点で導入企業46万社、500万ユーザーを獲得しています。

LINE WORKSはサービス立ち上げ当初からパートナーの開拓を行っており、ウェブ経由の販売は直販、それ以外はパートナー販売という体制をとっています。

特に地方のマーケットに力を入れており、多くのSaaS企業が地方にアプローチをしていない時期から、地方のローカルキングと言われる企業や自治体との連携を積極的に行い、地方マーケットを開拓しています。

パートナーセールス成功のコツと注意点

直販とパートナーセールスのバランス

直販とパートナーセールスのバランスは、SaaS企業における販売戦略を最適化する上で重要です。直販は、顧客とダイレクトに関わることで製品の細かなニーズに応えることができますが、市場カバレッジの拡大や新規顧客の開拓には限界があります。

これに対し、パートナーセールスは、販売代理店を通じて新たな市場への進出や顧客基盤の拡大が可能となり、多様な顧客層にリーチする効果をもたらします。

一方で、パートナーセールスの拡大が始まると、既存の直接販売部隊とのバッティングが発生します。

パートナーセールスをうまく拡大している企業は、パートナーに期待する役割をしっかりと定義をして、直接販売の役割と被らないようにコントロールをしています。

また、パートナーセールスは短期的には成果が出づらいため、社内での期待値調整なども必要になります。

パートナーセールスの注意点

パートナーセールスを進める際の注意点として、明確な契約条項の設定や、互いの役割と責任をはっきりさせることが挙げられます。

パートナーセールスはお互いの持っているリソースや顧客ネットワークを提供し合うことで成果を上げる仕組みのため、双方が利益を得られる仕組みやルールを作らないと継続することが難しくなります。

そのためにも、成功事例がで始めたタイミングで共有目標を設定したり、継続的なコミュニケーションが取れる体制の構築などが必要になります。

まとめ

SaaS企業におけるパートナーセールスは、製品やサービスの市場拡大と収益性向上の重要な手段です。販売代理店の開拓は、SaaSベンダーが新たな顧客層にリーチできるチャネルとなり、自社のセールスチームのリソースを超えて市場のカバレッジを広げることができるため、SaaS企業にとってパートナーセールスの重要性は高まっています。

本記事で紹介した事例や注意点を参考に、自社のパートナーセールスを構築して行ってください。