いま注目の営業手法「アカウントマッピング」入門。自社とパートナーの理想的な協業パターンとは?(後編)
2023/10/13
いま、米国や欧州を中心に注目を集めはじめている「パートナーエコシステム」や「ニアバウンド」という考え方。これらは共通して、「アカウントマッピング」という行為を通じて営業活動を推進します。
近年立ち上がりつつある、BtoBビジネスの新たな手法における重要概念「アカウントマッピング」について本記事では解説します。
アカウントマッピングとは?
アカウントマッピングとは、協業する企業や個人がお互いのデータを提供しあい、それぞれの紹介からアプローチできる顧客情報を重ねて、その後の共同提案や紹介など、新しい営業の選択肢を生み出すアプローチです。
アカウントマッピングには、大別すると5つのメリットがあります。誰がどんな情報を提供するかで、そのメリットは変わります。
- ①最適なパートナーを見つける:パートナー契約を提携した相手が、本当にお互いに利益を生み出す相手なのか、その相性を見極めてパートナーエコシステム経由の営業施策をより効果的に進められるようになります。
- ②パートナー経由での案件数の増加:パートナーから顧客を紹介してもらう、あるいは相性の良いツールとしてプッシュしてもらうことで、優良なリードを創出できます。
- ③営業進捗率を上げる:パートナー企業経由で顧客の課題を事前に把握できたり、ツールの連携を通じて導入メリットを向上させたりすることで、営業進捗や受注率の向上が見込めます。
- ④契約金額を上げる:パートナーのツールと組み合わせて上位のオプションプランを提案することで、新規・既存顧客ともにアップセルを狙えます。
- ⑤解約率の低下:自分たちとパートナーのサービスを連携して使ってもらうことで、サービスの利活用が促進され、結果的に解約率が下がります。
参考記事:いま注目の営業手法「アカウントマッピング」入門。その5つのメリットとは?(前編)
それでは、自社・パートナー企業がどのような情報を出せば、いかなるメリットが得られるのでしょうか。ハイウェイでは、その組み合わせを下記のように整理しています。
①自社(A社)・パートナー(B社)ともに既存顧客の場合(左上)
最初に、自社(メーカー)とパートナーがお互いに既存顧客のデータを提供するパターンについてご紹介します。
このパターンでは、各社の既存顧客のデータを提供しあい、お互いに重なりあう、共通してサービスを導入している企業に対して、一緒に連携してソリューションを追加提案します。
メリットは、契約金額が上がることと、解約率の低下です。
連携してソリューションを提供する際、「既に導入している弊社とパートナー企業のツールを繋ぐと、このような使い方ができます」といった提案が可能に。例えば、人事労務システムを提供する企業と、そのパートナーであるタレントマネジメントのSaaSを提供する企業が連携すれば、「人事マスタにタレントの評価データなどをAPI経由で統合し、システムを横断しなくても一括で見れるようになります」といった提案が可能になるでしょう。
お互いの既存顧客にこうした提案を行い、その反応が良ければ、金額がワンランク上のオプションプランを提案し、アップセルの創出が可能になります。
また「解約率の低下」という観点では、ツール同士を連携することで利便性が上がり、導入企業内での定着率が向上。うまく使ってもらえることで、結果的に解約率の低下が見込めます。
なお、契約金額の向上・解約率の低下は、ともにCSチームがKPIを担当することが一般的です(あるいは、アカウントマネージャーが担当することもあります)。したがって、既存顧客 × 既存顧客のアカウントマッピングでは、CSチームが主導となってシステムを活用していくことになります。
②自社(A社)が商談中 × パートナー企業(B社)が既存顧客の場合(左)
続いて、自社が商談中の企業が、パートナーの既存顧客であるケースをご説明します。
この場合、パートナー企業の担当者から、「いま提案を受けていると話を聞きました」「ツール同士が連携できるので、いまの業務がこのような形で改善できます」「よかったら使ってみてください」と商談中の導入をプッシュしてもらうことが可能です。
メリットは、自社の営業進捗率が上がることと、お互いの契約金額の向上です。
まず、自社が商談で「御社が導入している、パートナー企業のツールと連携して使えます」といった提案をできることで、商談先にとっての導入メリットが大きくなります。
とりわけ営業をかけられている側の企業は、競合他社などのツールと相見積もりを取り、「A、B、Cのどのツールを導入しようか」と社内でコンペティションが起こっていることがあります。その際に、「既に導入して社内で使っているツールと相性がよく、連携によって機能が広がる」という点は、導入の意思決定においてプラスに働きます。
また、商談中に「既に導入しているパートナー企業からツールの説明を受ける」といったプッシュを行えば、よりシームレスに導入できるイメージが湧き、優先的に導入が決まる可能性が高くなるとも言えるでしょう。
ここまでは商談中の自社にとってのメリットが主でしたが、既に顧客であるパートナー企業にとっても紹介にはメリットがあります。①で先述したように、パートナー企業同士がお互いに既存顧客になれば、連携プランの提案によって契約金額(提案の総額)を上げることも見込めるでしょう。
③自社(A社)のターゲット × パートナー企業(B社)が既存顧客の場合(左下)
続いて、自社のターゲット企業を、パートナー企業に紹介してもらうパターンです。
これは最もシンプル、かつ、わかりやすく自社に力強いメリットがあるパターンでしょう。自分たちがアタックしたいと思っている企業を、既存顧客としてすでに関係構築ができているパートナーに「紹介してください」と依頼します。
メリットは、最適なパートナーが見つかることと、パートナー経由での案件数の増加です。
まず、パートナー企業とパートナーシップ契約を結んだ直後は、このパターンでのアカウントマッピングを推奨します。なぜなら、「自社のターゲット企業が、パートナー企業の既存顧客である」というケースが多いのであれば、それは相性の良いパートナーだということだからです。
アカウントマッピングを通じて、「私たちはこの企業に提案したいのですが、御社と契約している企業ですか?」と聞くことで、このパートナーと協力しあう(とりわけ営業上の)メリットが大きいことが明確になる。つまり、パートナーシップそのものの価値を算定できます。
そして、相性の良いパートナーを発見できれば、具体的な案件数の増加につながるでしょう。
マーケティング担当者であれば、「いかにリードを創出するか」。営業担当者であれば、「いかに営業進捗を生み出すか」が現場の主な関心事です。そのため、パートナー経由で有力なリードを生み出せたり、営業のアクションに選択肢が生まれたりするのであれば、現場にも「積極的にパートナーシップを活用したい」という意欲が生まれます。
この組み合わせを有効に活かせるならば、営業活動全体を大きく前進させ、自社の売上を伸ばすことができるでしょう。
④自社(A社)の既存顧客 × パートナー企業(B社)が商談中の場合(上)
今度は自社の既存顧客に対して、パートナー企業が現在商談中であるパターンです。
基本的には、パートナー企業から紹介してもらう②とは反対に、自社内にいる既存顧客の担当者が、パートナー企業のツールを顧客に勧めてプッシュすることになります。
「弊社のツールと連携する、良いツールがあります。よろしければ、今度紹介してもよいでしょうか?」と話を持ちかけることがネクストアクションになります。
メリットは、契約金額が上がることと、解約率が下がることです。
既存顧客をパートナーに紹介して、連携するオプションプランの提案を行うことで、現在よりも一段階上のプランの導入が決まり、契約金額を上げられる可能性があります。
もちろん、既存顧客を自社が紹介したからといって、すぐに売上が向上するわけではありません。しかし、他社のツールと連携して使ってもらうことで、少なくとも解約されるリスクを下げることはできます。
自社と全く関係のないツールが導入されるよりも、自社と連携できるパートナー企業のツールを選んでもらうことで、顧客企業はより便利になる。結果的に、自社ツールを他社に乗り換えられるリスクと、解約率が下がると言えるでしょう。
⑤自社(A社)もパートナー企業(B社)も商談中の場合(中央)
自社が商談中の顧客を、パートナー企業も商談中であるパターンです。
この場合は、お互いに商談顧客のデータを提供して共同提案を作成します。同じ企業に対して、自社とパートナーがそれぞれ別で営業提案中であることがわかった場合、「ツール同士を繋げるので、セットで導入した方が得です」といった話ができます。
メリットは、営業進捗率が上がることと、契約金額が上がることです。
パートナー企業と共同で提案とクロージングを行うことで、顧客側の導入メリットが増加し、導入に向けた営業のステップを進めやすくなります。また、連携するオプションプランを提案することで、契約金額の増加が見込めます。
⑥自社(A社)の顧客 × パートナー企業(B社)のターゲットの場合(右上)
自社の顧客企業を、パートナーに紹介するパターンです。
③に対して、こちらはパートナーにとって最も大きなメリットがあります。自社が既存顧客としてすでに関係構築が完了している企業を、パートナーに紹介します。
自社にとってのメリットは、解約率が下がることと、契約金額が向上することです。
④と同様に、既存顧客をパートナーに紹介して、連携するオプションプランの提案を行うことで、うまく決まれば現在よりも一段階上のプランで契約金額を上げられる可能性があります。また、自社と連携しているパートナーのツールを選んでもらうことで、顧客企業はより便利になり、解約率が下がると言えるでしょう。
⑦⑧どちらか片方がターゲット企業 × 商談中の企業の場合 (右・下)
自分たちの商談している企業に、パートナーのターゲット企業を紹介する/自分たちのターゲット企業を、パートナー企業が商談中に紹介してもらうケースです。
例えば、自社の提案中にパートナーが営業をかけたがっていたら、「うちのツールと相性がいいのでよかったら話を聞いてください」と繋ぎます。
ただし、このケースは営業に技量や顧客からの信用が必要なので、難易度は高いと言えます。したがって、実際に起こる場合は少ないと言えるでしょう。
わかりやすいメリットとしては、営業進捗と契約金額の向上です。自社、あるいはパートナーが提案中の企業から、自社だけでは満たせない機能のニーズを相談されていた場合は特に有効で、パートナー同士のツールを一緒に提案することで、顧客にとって「トータルで提案できる自社」という印象を与えられます。
例えば、自社が人事システムを提案している時に、顧客から「タレントマネジメントシステムも検討したい」と要望が出てきたとします。その場合、商談中でもパートナー企業のツールを「このツールと連携可能です」といって提案することで、契約金額の向上も見込めるでしょう。
⑨お互いにターゲット企業の場合(右下)
お互いのターゲットリストを照合し、重なる場所に共同で新規開拓をしにいくパターンです。
メリットは、アカウントマッピングを通じてお互いの相性の良さがわかり、最適なパートナーが見つかることです。
ターゲット企業同士が被った時は、お互いに共同でマーケティングする話になります。具体的なアクションとしては、共催セミナーを開催し、お互いにとってメリットのある顧客を集める、といったことが考えられます。
ただし、相性の善し悪しは判断できても、その瞬間でのアクションには結びつきづらい側面もあります。他の連携方法は営業担当が動けばすぐに成果に繋がりやすいですが、共同マーケティングはどちらかといえば戦略立案に重きを置き、その後は長い時間をかけて提携を行っていくことになります。
データ提示の方法により、多様な選択肢が生まれる
アカウントマッピングのメリットは、自分たちが提示するデータの属性によって変わります。
例えば、相手に関わらず、自社の既存顧客のデータを提示することによってメリットが大きいのはCSです。それによりKPIである解約率の低下やアップセルによる契約金額の向上といったメリットが見込めます。
また、商談中の顧客データを自社が提供することで得られるメリットは、営業進捗率アップと契約金額の向上。現場の営業に新たな選択肢を創出できると言えるでしょう。ターゲット企業のデータを出す場合は、最適なパートナー経由の案件を発見・創出し、案件数の増加が期待できます。
これまでアライアンスとして製品同士を繋いではいるけれども、ゴースト化しているパートナー企業がいれば、改めてアカウントマッピングを実施することで「これが一緒にできるかもしれませんね」とパートナーとしての関係性を再構築することもできます。
ハイウェイは、日本でいち早くアカウントマッピングの手法を導入し、実践可能なツールを提供しています。営業が取りうる選択肢が広がり、売上向上にも繋がるアカウントマッピングに関するツールの提供が可能ですので、ご興味があればお問い合せください。