グループ経営とは?グループ連携でのシナジー事例・おすすめツール徹底解説
ノウハウ
2024/04/17
1997年に純粋持ち株会社の解禁が行われて以降、純粋持株会社会社が増えており、グループ経営は経営における大きなテーマとして掲げられています。
また、2000年代前半から、本格的に連結決算中心主義に移行してきました。
近年では、IT・ソフトウェアや建設、製造など幅広い領域でM&Aが加速しており、改めて、グループ経営の最適な手法が見つめ直されています。
引用:MARR Online “グラフで見るM&A動向”
https://www.marr.jp/menu/mastatistics/magraphdemiru/entry/35326(2024/04/17)
「事業会社同士のシナジーを創出したいがうまくいかない」「M&Aした企業のリソースを最大活用しきれていない」とお考えの方のためにも、本記事では、グループ経営とは何か?連携時の課題やメリット・デメリット、シナジーを創出した事例などをご紹介します。
グループ経営の経営企画や、グループ企業間のシナジーやDXに取り組まれている方はぜひご覧ください。
グループ経営とは
グループ経営とは、「親子会社などの資本関係にある企業グループを統一化し、組織目的を達成・実現していくための経営手法」です。
また、元々の意味としては、複数の企業がグループを構成し、取引拡大や付加価値の最大化を計っていくことを指していました。
グループ経営では、グループ会社間でのシナジーを最大化することが求められます。
その主な手法が、生産力や人材、顧客などの資源の最適配分です。資源の最適配分を行うためには、組織目的を理解し、グループ企業各社が持つ有形・無形の資源をグループ企業全体で利用できるよう、配分を行う存在が必要です。
そのために、ホールディングスなどの持株会社を立てて、本社機能を持たせます。また、持株会社を立てるだけではなく、グループ内の情報を本社が常に把握し、資源を配分できるための体制を構築しておかなくてはなりません。
また、グループ経営において頻繁に名前が挙がる子会社・グループ会社・関連会社ですが、それぞれの違いも簡単に紹介をさせていただきます。
「子会社=過半数の議決権(≒株)を保有されている会社」
「関連会社=20%以上の議決権(≒株)を保有されている会社」
「グループ会社≒親会社・子会社・関連会社を全てまとめた会社」
と分類することができます。
また、これら3つのさらに細分化した定義もあります。
・子会社:議決権の過半数を親会社に保有されている会社。
・完全子会社:子会社の中でも100%の議決権を親会社が保有している会社。
・連結子会社:連結決算の対象となる子会社。
・非連結子会社:子会社の中でも連結対象外の子会社。経営や財務への重要性の観点などから外れることを容認されているもの。
・関連会社:親会社が実質的な影響力を持っている会社。子会社の定義に合致しなくても関連会社のケースがある。(議決権の保有率が50%未満の場合など)
・持分法適用会社:連結決算時に、持分法の適用対象となる関連会社。
・関係会社:親・子・関連会社を含めた、関係性のある会社全体を指す。
・グループ会社:法的にはグループ会社という呼び方はなく、関係会社の類義語として用いられることが多い。
このように、同じグループ会社であっても親会社の議決権の保有率や事業への影響度で呼び方が変わります。
グループ経営のメリット
グループ経営を行う具体的なメリットについてご紹介をします。
1.意思決定のスピード・精度の向上
グループ経営の体制を構築することで、各事業に関する権限は事業会社に集約されます。
そのため、より事業に近いメンバーが経営に携わり、環境に柔軟に対応できる体制を作ることができます。これによって、より早い意思決定を、より高い精度で行うことが可能になります。
また、事業会社でマネジメント経験を積んだメンバーが、将来のグループ経営者になることが多く、マネジメントを学ぶ機会が増えるのも副次的なメリットとしてあります。
2.事業再編や管理体制の簡易化
事業部ではなく、事業会社として扱うことで、事業の取得や売却が簡単になり事業再編が行い安くなります。
また、大元を束ねる持株会社がヒト・モノ・カネ・情報を管理することで、効率的な管理が可能になります。
3.税負担の軽減
完全子会社のみ対象ですが、黒字企業と赤字企業の所得を通算できるため、税負担を軽減できます。
このように、連結で決算を行うことで税負担を軽減することができます。
4.リスクの分散
グループ化のメリットとして、リスク分散も挙げられます。
特定の事業で業務停止命令などを受けた際に、グループ化をしていないと、他の事業も停止をする必要があります。
事業ごとに会社を分けることでこう言ったリスクを分散することが可能になります。
グループ経営の課題とデメリット
一方で、グループ経営を行うことによる課題やデメリットもあります。
課題:データの収集・分析
グループ経営は事業や組織の規模が大きくなるため、社内に蓄積させるデータの量が多くなります。
グループ内企業のデータを横断的に収集・分析を行うことで、経営状態の把握や的確な市場分析を行うことが可能です。
そのためにもグループとしてのデータ収集・分析が課題になってきます。
課題:人材の確保・育成・的確な配置
グループ経営においては人材の確保・育成・的確な配置も、重要なポイントになります。
特定のスキルや人脈を持つ人材をグループ企業間で有効活用することで、事業会社単体ではできなかったような施策や成果につながるケースがあります。
グループ全体の人的資本を把握し、的確な確保・育成・配置をしていくことが求められます。
デメリット:グループ間での対立
グループ経営を行うことで、事業会社ごとの意思決定スピードや判断が早くなる代わりに、事業会社の違いが明確になります。
それによっては方針の違いから対立する事業会社が出てくる場合があります。最終的には親会社の意向に従う必要があるのですが、協力関係をうまく築けなくなるといったデメリットがあります。
これらを防ぐためにも、持株会社がリーダーシップを発揮して、グループ間の対立を防ぐことが求められます。
デメリット:間接コスト増大のリスク
また、持株会社と各子会社において、人事労務・財務経理などの間接部門が設置されていると、その維持コストが重複します。
ただ、全て持株会社に集約すればよい、というシンプルな話ではなく、各子会社ごとに採用や人事評価ルールなどが違い、持株会社が全て管理をするのが難しいケースも多々あります。
実務に弊害が出ない範囲で、間接部門の業務の効率化を図ることは、グループ経営の一つの課題です。
グループ間の連携の取り組み事例
ここまででご紹介した課題やデメリットを踏まえ、グループ経営のメリットを最大化している事例をいくつかご紹介いたします。
MS&ADインシュアランス グループ ホールディングス株式会社
MS&ADインシュアランス グループ ホールディングス株式会社は三井住友海上火災保険株式会社、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社、三井ダイレクト損害保険株式会社、三井住友海上あいおい生命保険株式会社、三井住友海上プライマリー生命保険株式会社、MS&ADインターリスク総研株式会社の6社を子会社に持つ、日本の保険持株会社です。
グループ全体で、顧客への提供価値を上げるために、グループ横断でデータを共有する
「グループデータ連携基盤」を開発しています。
その際に、個人情報が特定されないように、最先端のデータ仮想化技術を用いて連携することで、個人情報を共有するための同意取得の手間を減らしながら、スピーディーにデータ活用を行える体制を作りました。
引用:三井住友海上 “グループ横断でデータを共有する「グループデータ連携基盤」を開発”
https://www.ms-ins.com/news/fy2023/pdf/0425_2.pdf(2024/04/17)
このデータ連携によって、新しいソリューションの提供や、既存サービスの高度化が可能になります。
また、共同で管理し、モニタリングを行うことでデータ漏洩などのリスクを減らすことも実現しています。
グループ経営の課題であるデータの収集・分析に対して、「グループデータ連携基盤」を構築し、メリットを作り出しています。
伊予銀行
伊予銀行は「いよぎんホールディングス」を2022年10月に発足し、いよぎんビジネスサービス株式会社、株式会社いよぎんChallenge&Smile、いよぎんキャピタル株式会社、株式会社いよぎん地域経済研究センター、株式会社いよぎんディーシーカード、いよぎんリース株式会社、株式会社いよぎんコンピュータサービスの7つのグループ会社との顧客情報や営業情報を強化する意向を示していました。
その中で、法人顧客の事業情報や商談状況などをグループ各社で共有をできるように「グループ企業間連携CRMサービス」を構築しました。
CRMサービスの導入により、これまで各社内でしか共有できていなかった情報を、グループ全体で共有可能になりました。
引用:IT Leaders“伊予銀行、グループ会社間で法人顧客情報と営業情報を共有するクラウドシステムが稼働”
https://it.impress.co.jp/articles/-/24709(2024/04/17)
パーソルグループ
パーソルグループでは、グループの営業職社員が顧客とのタッチポイントを創出するために独自開発したWebアプリ「Genie(ジーニー)」を活用しています。
元々はパーソルホールディングスがグループ各社に対して、法人マスタや名刺管理システムなどの営業管理システムを複数提供していました。
その結果、営業は利用するシステムが多岐にわたり、欲しい情報にすばやくアクセスできないという課題が起きていました。
また、ホールディングスとして、グループ各社の連携を強化して、クロスセルの機会をより拡大させていきたいという意向がありました。
このような課題を受け、グループ各社に散在するシステムを整理し、グループ各社の連携を強化する目的で作られたのが、Webアプリ「Genie(ジーニー)」です。
「Genie」では、社内の営業の保有している名刺などの情報だけでなく、企業情報も一元化して確認できるようになっているようです。
また、「DC(Diverse Connect/ダイバース コネクト)制度」というものがあり、グループ会社の営業同士が連携し、パーソルグループ全体でクロスセルを促進しています。
所属会社では解決できないが、グループ内の他企業で解決でき得る課題が浮上した際に、Genie上で依頼をすることでグループ内の他企業の担当営業へ簡単に連携できます。
これによって、グループ内のDC制度を使って成約した案件の数が前年比で110%になっており、売上アップの効果も生まれています。
グループ間の営業連携におすすめのツール
伊予銀行やパーソルグループの事例から見てもわかるように、グループ経営の課題の一つにグループ間の営業連携が行いづらい。ということが挙げられます。
ここでは、グループ間の営業連携におすすめのツールをご紹介します。
Hiway(ハイウェイ)
株式会社ハイウェイが提供する「Hiway(ハイウェイ)」は、グループ企業間の営業連携、CRM統合を効率化し、グループ間の営業連携を強化するグループ連携CRMです。
各種の外部ツール連携機能を活用することで、グループ各社の営業・名刺情報を効率的に集約し、グループ企業間で共有をすることが可能です。
また、上場企業での導入実績も多く、安全に情報の共有・管理を行うことが可能です。
サービス名:Hiway(ハイウェイ)
製品サイト:https://product.hiway.app/
終わりに
グループ経営とは、「親子会社などの資本関係にある企業グループを統一化し、組織目的を達成・実現していくための経営手法のことです。
本記事で紹介した課題やデメリットを全てカバーするのには、時間と手間がかかります。グループ各社の状況に合わせて最適な連携手法を見つけて、グループ経営を加速させましょう。
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Gakuto Nakamura
株式会社ハイウェイ
Co-founder COO